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のどの動きを可視化する「嚥下運動モニター」 言語聴覚士と情報共有

嚥下障害があると誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが
嚥下障害があると誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが

 食べ物をのみ込む力が低下する「嚥下(えんげ)障害」の患者には、医療機関のリハビリ科などで嚥下訓練が行われる。嚥下障害があると、本来、食道に入るはずの食べ物や唾液が気道に入り込み、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがあるからだ。

 嚥下機能の評価や訓練は、主に言語聴覚士(ST)が患者ののどに指を当て、喉頭の動きを確認して行われる。しかし、これだと嚥下機能の状態や訓練による機能改善がSTにしか把握できない。

 そこで開発されたのが、嚥下時ののどの動きを可視化する嚥下運動モニター「B4S(ビーフォーエス)」。嚥下訓練を補助するヘルスケア製品として、今年10月に販売された。機器本体(幅65ミリ、長さ110ミリ、高さ60ミリ)をSTが患者ののどに当てて使用する。

 どんな技術で喉頭の動きを捉えるのか。藤田医科大学と共同開発した産業用ベルトメーカー「バンドー化学」(神戸市)の医療ヘルスケア営業グループ・佐藤敦司専任部長が言う。

「B4Sの肝となる技術は、当社が独自開発した伸縮性ひずみセンサー『C-STRETCH(シーストレッチ)』です。従来にないゴムセンサーで、体表面にフィットするのが特徴です。センサーをのどに当てることで、嚥下時の喉頭の上下運動を正確に計測できるのです」

 センサーによって得られたデータは、ブルートゥースで専用タブレットに送信され、計測結果が波形やグラフで表示される仕組み。「カウントアプリ」と「トレーニングアプリ」の2種類のアプリで喉頭の動きを可視化することができる。

 カウントアプリは、波形から嚥下を捉え、30秒間に何回唾液を嚥下できるかカウントする。これは臨床でも使われている「反復唾液嚥下テスト」で、30秒間に2回以下だと嚥下障害が疑われる。この嚥下回数と嚥下時間は自動的に記録され、直近3回分のデータ変化をグラフで確認できる。

 トレーニングアプリは、嚥下訓練時の波形を表示する。訓練では嚥下機能の強化のために、嚥下したときに、のどぼとけを最も高い位置に保つ「喉頭挙上訓練」を行う。どれくらい喉頭が上がり、維持できているかが波形で分かるのだ。

「過去の結果データは、すべて記録され患者さんとSTが共有できます。それによってSTは指導しやすくなり、患者さんは納得して訓練に取り組めるので、モチベーション向上が期待できます」 B4Sには一般家庭向けはなく、医療・介護施設向けの製品になる。

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