役に立つオモシロ医学論文

ワクチンのブースター接種でコロナ感染による死亡が90%減る 著名医学誌に論文

ブースター接種により死亡リスクは90%低下
ブースター接種により死亡リスクは90%低下(C)共同通信社

 今年の秋以降、新型コロナウイルスの感染拡大は落ち着きを取り戻しつつあります。しかし、世界的にはオミクロン変異株の出現など、まだまだ予断を許しません。また、2回目のワクチン接種から半年以上が経過した人も多く、感染予防に対する効果の減弱も懸念されています。

 そのような中、世界各国では新型コロナウイルスワクチンのブースター接種(3回目の追加接種)が開始されています。

 日本でも今月から、2回目のワクチン接種を終えた日から8カ月以上経過した18歳以上の方を対象に、ブースター接種が始まっています。

 一方で、ブースター接種の有効性に関する研究データは限られているのが現状です。そんな中、世界的にも有名な医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」の電子版に、新型コロナウイルス感染症に対するブースター接種の有効性を検討した研究論文が2021年12月8日付で掲載されました。

 この研究では、2回目の新型コロナウイルスワクチン(ファイザー社製)接種から5カ月以上経過したイスラエル在住の84万3208人(平均68.5歳)が対象となりました。このうちブースター接種を受けた75万8118人と、ブースター接種を受けていない8万5090人が比較され、新型コロナウイルス感染症による死亡リスクが検討されました。

 54日間にわたる研究期間中、1日の死亡率(10万人当たり)は、ブースター接種を受けた集団で0.16人、ブースター接種を受けていない集団で2.98人であり、ブースター接種によって死亡リスクが90%低下しました。

 研究期間が短いことは有効性の評価に議論の余地をもたらすものの、ブースター接種によって多くの方の命を救える可能性が示されています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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