年末年始に突然の痛みが… 口のトラブル解消に役立つ「市販薬」はどれ?

写真はイメージ
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 今年もあと数日で仕事納め。いまだ仕事が忙しくて歯科医院に行けず、虫歯、歯周病、口内炎などの口のトラブルを抱えたままという人も多いのではないか。歯科医院に行きたいが、予約が取れず、年末年始の休み中に痛みが出たらどうしよう……と悩んでいる人もいるはずだ。自由診療歯科医師で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に急な口のトラブルに対処するために備えておきたい市販薬について聞いた。

 一口に歯痛というがその原因はさまざま。多いのは「虫歯」「歯茎の腫れ」「口内炎」だ。

 中でも不意の歯痛で多いのは虫歯だろう。昔から虫歯の痛みに「正露丸」が効くと言われているが本当か?

「本当です。痛みのある虫歯に正露丸を詰めることで痛みを一時的に取ることは可能です。実際、添付文書の効能にも軟便、下痢、食あたり、水あたり、はき下し、くだり腹、消化不良による下痢に並んでむし歯痛と書かれています」

 そもそも正露丸は木クレオソートを主成分とする生薬で、日露戦争の頃から経験的に下痢止めとして使われてきた。最新の研究でその機序が明らかになり、腸の蠕動運動を正常化し腸管内の水分量を調整することで、軟便や下痢などに効くことがわかっている。

 では、なぜ、虫歯痛に効くのか?

「歯科では歯の根の治療をするのに、ホルムクレゾールと呼ばれるホルマリンとクレゾールにエタノールを添加した薬を消毒剤として使います。実は木クレオソートにはクレゾールが含まれており、これを虫歯の穴に詰めることで虫歯の中にいる細菌などの働きを抑え、歯の歯髄の鎮痛・鎮静効果が得られるというわけです」

 なお、クレオソートというと強力な防腐剤をイメージする人もいるかもしれない。

 しかし、クレオソートには2種類あり、木から作られる植物由来の木クレオソートと鉱物由来の石灰クレオソート油がある。名称が似ていることから同じようなものと誤解された経緯もあるが、原料、成分、働きはまったく別物だという。

■一時的に痛みを抑える解熱鎮痛剤は空腹時の使用を避ける

 歯周病や親知らずなどで歯肉の部分に細菌が入って増殖し、歯茎が腫れた場合はどうすればいいのか。抗生物質の服用が必要な場合があるが、抗生物質などの処方薬は医師の診断と処方がなければ入手できない。

 そのため、かつてはつまようじなどで歯肉を刺して中の膿を出して一時的に痛みを抑えた、というつわものもいたというが、いまは薬がある。

 ドラッグストアなどで買える塗り薬でいえば、デントヘルスR錠、メディケアデンタルクリーム、サンスターガム・メディカルペーストEXなど。うがい薬なら、アセスメディクリーンなどがある。

 年末年始は過食の時期でもある。新型コロナの影響で外での宴会は控えても、年末年始は口寂しさから家庭内でだらだらとお酒を飲み、食べ物を口にする人も多いはずだ。

「口内炎はストレスや睡眠不足、細菌やウイルス感染などで発症しますが、食事中などに頬を噛んだり、暴飲暴食や偏食により、消化管からの油性のビタミンAなどが吸収できにくくなるなど、消化吸収の偏りが原因となる場合もあります」

 口内炎の治療にはオルテクサー口腔用軟膏といった塗り薬や口内炎パッチ大正クイックケアといった貼り薬、飲み薬のトラフル錠などがある。

 もちろん、解熱鎮痛剤も歯痛や歯茎の痛みなどを一時的に抑える効果がある。実際、ロキソニン、イブ、バファリンなどの添付文書の効能または効果の欄には「歯痛」とある。

「痛みのもととなっているプロスタグランジンを抑える非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が鎮痛成分として使われますが、とくにロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソニン)は歯科でもよく使われます。ただし、15歳未満の子供は薬の代謝や排出に関わる内臓が十分発達していないため、副作用が強く出ることがあるのでNSAIDsは勧められません。子供用の鎮痛薬にはアセトアミノフェン入りの解熱鎮痛剤が使用されます」

 解熱鎮痛薬の中にはこうした鎮痛成分以外にも、催眠鎮静成分や鎮痛補助成分(カフェイン)、制酸剤などが配合されているものもある。

「車の運転など眠くなると困るときには催眠鎮静成分の入っていないものを選ぶとよいでしょう。なお解熱鎮痛薬は胃に負担がかかる場合があるので空腹時は避けてなるべく食後に飲みましょう。お腹が減っているときにはコップ1杯の液体と飲みましょう」

 とはいえ、こうした薬は一時的な効果があるだけで、虫歯を治す効果はない。むしろ、その鎮痛・鎮静効果によって治療が遅れる恐れもある。休み明けには必ず歯科医院を受診し、治療することは言うまでもない。

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