Dr.中川 がんサバイバーの知恵

LUNA SEA河村隆一さんは肺活量を懸念…肺がん手術で「呼吸機能」はこう変わる

河村隆一さん(C)日刊ゲンダイ

 1つの肺葉切除では、一般に呼吸機能は8割前後に落ちるとされます。肺葉の大きさによるため、右の上葉は17%減、中葉は12%減、下葉は27%減です。大体2割減で、歩くと息切れをしやすいので手術後はリハビリが欠かせません。数カ月から半年ほどで、手術前に近い状態に回復するのが一般的です。

 最近は、より小さなエリアで済む区域切除も注目されています。術後の呼吸機能の低下は、5~10%ほど。腫瘍の大きさが小さいほど術後の長期成績が良く、区域切除の対象となる腫瘍径3センチ未満のうち2センチ以下なら肺葉切除と同程度と報告されています。

 従って3センチ以上は肺葉切除です。

 肺の奥にできる腺がんに対し、気管支など肺の中心側に発生するのが扁平(へんぺい)上皮がんです。その場合、がんができた側の肺を全摘することも、なくはありません。その場合の呼吸機能低下は、右が55%、左が45%(肺は右の方が大きいため)。運動は難しく、日常生活も困難を来すため、なるべく片肺全摘は回避される方向に。それで行われるのが、化学放射線療法です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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