進化する糖尿病治療法

ストロング系チューハイ「2本目」に手を伸ばす前に考えてほしいこと

甘い口当たりと清涼感でつい飲み過ぎてしまう

 糖類は急激に血糖値を上げるので、糖尿病の人は「糖類ゼロ」という言葉が魅力的に思えますが、食品表示基準では、飲料100ミリリットル当たり0.5グラム以下であれば「ゼロ」「ノン」「無」「レス」といった「含まない」という表示ができます。わずかでも含んでいれば、何本も飲めば摂取量も増えていきます。

 アルコール依存症に詳しい精神科医などの話を聞くと、最近、ストロング系チューハイによるアルコール依存症も増えているそうです。

 それを受けて、飲料メーカーの「オリオンビール」は、2019年5月に発売を開始したストロング系チューハイ「WATTA STRONG」を、19年末には商品群から外しました。

 代表取締役のインタビュー記事を拝見すると、アルコール依存症の方をサポートしている団体や当事者に現状を伺う機会があり、「コンビニで買った高アルコールチューハイを1~2本飲み、酔っぱらって倒れるように寝る。そのような習慣を持つアルコール依存症の人はすごく多い」といった声を耳にし、販売をやめることを決断したそうです。同社のストロング系チューハイは、チューハイの売り上げの4割を占めていた商品で、またストロング系チューハイの販売中止は業界初だったとのこと。

 メーカーがそのように動いたのはなぜか? ストロング系チューハイの2本目に手を伸ばす前に、ぜひ考えてみてほしいです。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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