受験生の食事術

イライラを防ぐ食べ方は? お菓子や早食いを避ける

写真はイメージ
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 年が明けるといよいよ受験シーズン本番。ただでさえこの時期の受験生は最後の追い込みでイライラするが、今年はいらつきに拍車がかかっているのではないか。新型コロナウイルスの影響で授業がまともに行われなかったうえ、昨年のイレギュラーな入試のせいで出題傾向が掴みづらいからだ。そこで、時間栄養学の専門家で愛国学園短期大学非常勤講師の古谷彰子氏に、受験生の食事について話を聞いた。

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 近年、若者の精神的な健康問題の原因のひとつとして食生活が注目されています。受験間近なこの時期に、どのような食生活を心がければイライラを食い止めることが出来るのでしょうか。

 大学生268名を対象にした実験では、精神的に不安定になる原因のひとつに「睡眠不足」があり、その睡眠不足を引き起こすのが「加工食品」を週に3、4日喫食している人たちという報告がありました。加工食品に含まれていたもので多かったのがお菓子やジュースなどの嗜好品です。

 嗜好品には糖分が多く含まれていて、摂りすぎると血糖値が急激に上がってしまいます。この上がった血糖値を正常に戻そうとインスリンというホルモンが分泌されるのですが、そのインスリンが多量に出すぎると、今度は血糖値が急激に下がって逆に低血糖の状態になり、眠気が出てきたり、ボーッとしたりやる気がなくなってしまうのです。このような血糖値の急激な上がり下がりのことを「血糖値スパイク」と呼んでいます。

 低血糖の状態になると、今度はノルアドレナリンというホルモンを分泌して血糖値を回復させようとします。ノルアドレナリンは体にストレスがかかった時に対応してくれるホルモンなのですが、実際にかかっているストレスに加えて、甘いものを摂りすぎたことによる低血糖によってノルアドレナリンがたくさん出ると、余計にイライラしたり、焦ったり、落ち着きがなくなったりしてしまうのです。ですから、受験生は極力お菓子を控えることです。

 それでも、やっぱりお菓子は食べたい。そんな方に良い食べ方があります。1日の中で一番血糖値スパイクが起きやすいのが夕方から夜にかけてです。夕食時の急激な血糖値スパイクを起こさないためには、夕食前2時間~4時間前に焼き芋やグラノーラのような食物繊維の多いおやつを食べた方が逆に胃の中にある食物繊維がグルコースの吸収をゆっくりにして、夕食時に緩やかな血糖値上昇を起こすという報告もあります。お菓子に抵抗がある方は、食物繊維豊富な玄米や雑穀おにぎりなどを主食として先に食べ、後からおかずを食べる分食もおすすめです。

 これは甘いものに限らず、朝食を抜いていきなり昼食を食べたり、お腹がすきすぎて早食いしてしまった時にも見られる現象です。昼食後に眠くなるのはもしかしたらそのせいもあるのかもしれません。

 血糖値スパイクがイライラや眠気の原因のひとつにもなりかねないので、欠食や早食いを避けることも大切です。食べ方も大事で、「ベジファースト」と呼ばれる野菜を先に食べるという方法は血糖値スパイクを防いでくれます。最近の研究では、野菜以外でも肉や魚のタンパク質、汁物を先にとっても野菜と同じ効果が見られることがわかっていますので、ベジファーストならぬ、ベジプロテインスープファーストを心がけるとよいでしょう。

 とはいえ、バランスの良い食事を3食摂ることは大前提。1日の摂取エネルギーは守りつつ食べ方をちょっと変えてみることが大切です。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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