がんと向き合い生きていく

来年へ向けてオミクロン株に対する備えは大丈夫なのか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■社会の矛盾には黙っていてはいけない

 陽性者数が増えて、重症者を除いて自宅療養が基本となったのですが、家族内感染を防ぐのは難しい。それもあって、自宅あるいは病院外で亡くなって見つかる方が増えました。命が軽くなっているのではないか、そう感じました。

 私は、迷惑も顧みず役所の幹部と某議員に「自宅療養ではなく、オリンピック後の大規模な施設を利用し、そこに医師と看護師に常駐してもらい、なんとかして感染者と死者を少なく出来ないだろうか」と提案してみました。2人は話だけは聞いてくれました。

 秋になって、不思議に感染者数は減りましたが、オミクロン株が出てきて不気味です。備えは大丈夫なのでしょうか? 勝手にイライラしていた私などよりも、その何百万倍も大変だった、つらかった方がたくさんおられます。医療者も、医療者でない方も、仕事を命懸けで頑張らなければならない、それでも職を失って生活が大変な方もおられます。ここ数年は微減となっていた自殺者数は、昨年から増加に転じ、特に女性が増えているのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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