コロナ禍で検査が減少…喫煙者で息切れがあればCOPDに注意

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナ感染予防対策で、健診での実施が減った検査のひとつが呼吸機能検査(スパイロメトリー)だ。これによって、肺気腫や慢性気管支炎の総称「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」の発見がより遅れる人が出る可能性がある。

「COPDは、喫煙歴があれば60歳で15~20%、70歳以上は35~45%とありふれた病気ですが、知名度が非常に低い」

 こう言うのは、奈良県立医科大学呼吸器内科の室繁郎教授。COPDは、たばこに含まれる有害物質で肺に慢性的な炎症が起こり、肺の細胞が死んでいく病気だ。

「たばこ肺」とも呼ばれるように、9割以上がたばこで起こり、喫煙者はもちろん、副流煙に長期間さらされる環境にいた人にも起こる。

「肺はスポンジのような構造で、肺の細胞が死んでスポンジが壊れ、目が粗いスカスカな肺になっていきます。すると、肺が縮みにくくなり、息が吐けなくなる。肺が縮まないから、空気を十分に吸えなくなります」

 息切れが次第にひどくなり、同年代の人と話しながら歩いたり、坂道や階段を上れなくなって、息切れで体を動かすのがつらくなる。

 COPDは動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中、肺がんなど“たばこ関連の病気”のリスクも上げる。たとえば肺がんは、「COPDなし喫煙なし」の発生リスクを1とすると、「COPDあり喫煙あり」は6.19倍だ。

「COPDはフレイルにも大いに関係しています。息切れから身体活動が低下。呼吸にエネルギーを消費するので、栄養障害や体重減少を招きます。筋肉の量や質の低下につながり、負のスパイラルとなってフレイルが進行し、要支援、要介護状態に至りやすくなる」

■診断されていない患者数は推定500万人

 冒頭でCOPDは「ありふれた病気」と述べたが、「周辺にCOPD患者がいない」という人も多いのでは? それは、治療に結びついている患者が少ないからだ。2004年発表の大規模疫学調査によれば、日本人の40歳以上のCOPD有病率は8.6%で、推定患者数は530万人。しかし、17年の厚労省患者調査では病院でCOPDと診断された患者数は22万人。COPDなのに、診断されていない人は推定500万人もいる。

「肺は“余力”がかなりある臓器で、相当悪くならないとつらさを感じにくい。加えて、時間をかけて進行するので、体が息切れなど症状に慣れてしまう。患者さんに話を聞くと、“5~6年前から息切れがあった”という返事があることは珍しくない」

 COPDの早期発見、早期治療が肝心なのは、損傷した肺は元に戻らないからだ。

 早期であれば禁煙や薬物治療によって、健康な人とほぼ変わらない生活を送れる。運動、ゴルフ、旅行、山登りなども楽しめる。

 しかし、診断・治療が遅れると、進行を十分に抑えられず、体を動かせない生活になる可能性もある。

 COPDは前述の通りフレイルとも関連するが、早期治療はフレイルの予防にもなる。それだけではない。ほかの病気の早期発見につながるかもしれないのだ。

「COPDは現喫煙者の15.4%、元喫煙者の15.6%に発症するといわれています。そもそも、たばこは動脈硬化や肺がんなどさまざまな病気の危険因子ですが、現喫煙者・過去喫煙者でCOPDになる人は、たばこの有害物質の影響をより受けやすいことが考えられます。COPDの早期発見をきっかけに、ほかの“たばこ関連の病気”にも注意を向けることで、それらの早期発見も期待できるのです」

 COPDの早期発見に欠かせないのがスパイロメトリーだ。

 過去に100本のたばこを吸ったことがある人は、現在禁煙中の人も含めてCOPDの高リスク群。検査を受けた方がいい。

 健診では無理でも、総合病院・大学病院などの呼吸器内科を受診すれば大抵は受けられる。

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