医者も知らない医学の新常識

風邪をひいたら出血に注意! 抗凝固剤の服用者はリスク増

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 新型コロナウイルス感染症の流行以来、風邪の怖さが再認識されるようになっています。「風邪は万病のもと」というのは決して間違いではなく、熱や咳(せき)などの症状以外にも、体全体に大きな変化をもたらすのです。そのひとつが血液の出血傾向です。風邪の時には胃腸や脳などの出血が、他の時期より起こりやすくなることが知られています。

 特に注意が必要なのは、脳梗塞などの予防のために、血液をサラサラにする薬を服用している場合です。そうした患者さんでは、いったん出血すると血が止まるのに時間がかかり、出血がより重症化するケースが多いからです。以前から、こうした患者さんが風邪をひいた時期には、出血が多く起こることは知られていました。しかし、それが風邪自体のためなのか、風邪の時に使用される薬の影響であるのかについては、正確なことが分かっていませんでした。

 今年の「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」という一流の医学誌に、血液をサラサラにする抗凝固剤という薬を服用している患者さんが、どんな時に重症の出血を起こしたかを検証した論文が掲載されています。それによると、風邪をひいて2週間以内の時期には、それ以外の時期の2倍以上、重症の出血が起こっていたのです。その影響は、風邪の薬を飲まない人でも同じように見られていました。風邪の時には、出血など風邪以外の症状にも注意する必要がありそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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