3回目の接種に備える 新型コロナワクチン8つの疑問(前編)オミクロン株への効果は?

3回目の接種がスタート
3回目の接種がスタート(C)共同通信社

 新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種が2021年12月1日からスタートした。自分で納得した上で決断するためにも、3回目接種に関する情報を知っておきたい。

①3回目を接種しないと1、2回目の接種は無駄になるのか?

「日本で接種が行われているワクチンは、時間の経過とともに感染・発症・重症化の予防効果がいずれも徐々に低下していくことが、研究で明らかになっています。3回目の接種でそれらの低下した効果を高められるため、追加接種が推奨されているのです。しかし、重症化予防効果に関しては、低下するとはいえ比較的高く保たれています。3回目を打たなくても、1、2回目は無駄にはなりません」(国際医療福祉大学熱海病院検査部・〆谷直人部長)

②とりわけ3回目を接種したほうがいい人は?

 厚労省は「特に接種をお勧めする方」として、①高齢者、基礎疾患を有する方などの「重症化リスクが高い方」②重症化リスクが高い方の関係者・介助者(介護従事者など)などの「重症化リスクが高い方との接触が多い方」③医療従事者などの「職業上の理由などによりウイルス曝露リスクが高い方」を挙げている。感染制御認定薬剤師の荒川隆之氏(長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長)は言う。

「1、2回目を接種した人は、基本的には3回目を打つべきだと考えます。その上で、厚労省が推奨しているように、感染によって死亡や重症化するリスクが高い高齢者、肥満の人、高血圧、高血糖、高脂血症などの生活習慣病がある人は、積極的に3回目を接種したほうがいいでしょう。60歳以上では2回目接種から6カ月以降、重症例の発生率に上昇傾向が見られたとの報告もあります。また、喫煙者はワクチンによって産生された中和抗体の量=抗体価が低くなりやすいと報告されています」

③オミクロン株に効果はあるのか

 新たな変異株であるオミクロン株へのワクチン効果について、ファイザー社は「3回目の追加接種を受けた人では、オミクロン株に対する中和抗体の効果が2回接種の場合の25倍になり、従来のウイルスに対する効果と同じ程度に高まっていた」という実験結果を発表している。

「今のmRNAワクチンは接種して3カ月後に抗体価が半分以下、6カ月で90%減少するというデータがあります。ただ、中和抗体が激減しても、NK細胞などが体内の異物の排除を行う『細胞性免疫』は長期間残るとされます。ウイルスに対する免疫力がなくなるわけではなく、発症や重症化を抑える一定の効果は持続するのです。とはいえ、3回目接種で中和抗体を再び多くすることは重要です。従来株の中和抗体の量が多いと、オミクロン株についてもカバーして発症や重症化を抑える効果があると考えられています」(東邦大学名誉教授の東丸貴信氏)

④3回目接種を慎重に検討すべき人は?

 ポリエチレングリコールなどのワクチン成分に対し、重度の過敏症(アナフィラキシーショックや、全身の皮膚・粘膜症状、喘息、呼吸困難、頻脈、血圧低下といったアナフィラキシーを疑わせる複数の症状)が表れたことがある人はワクチン接種は禁忌とされている。

「1回目、2回目の接種でこうした症状があった人は、追加接種はできないとされています。また、因果関係はわからないとしても、ワクチン接種後に後遺症と呼べるくらい強い副反応があった人も慎重になったほうがいいでしょう。心筋炎、髄膜炎、心筋梗塞、脳卒中といった重篤な疾患を発症した人はもちろん、長期にわたって胸痛が治まらなかったり、ひどい頭痛が続いていたり、手足のしびれが残っていたりする場合は、3回目の接種は控えたほうがいいと考えます。ほかには、接種に対して精神的に強い抵抗がある人は、うつなどの精神疾患につながるリスクがあるので注意が必要です。小学生など11歳以下の子供へのコロナワクチン接種においては、重篤な副反応とその長期後遺症についての十分なデータはありません。欧米のような感染爆発の状況では別ですが、現状では慎重にリスクと効果のバランスを考慮したほうがいいでしょう」(東丸氏)

 厚労省が「重大な副反応」として警戒度を引き上げた心筋炎や心膜炎の発症が比較的多く見られる10代.20代の若年層もしっかり熟考したい。

「オミクロン株をはじめ今後の感染の広がり具合などによって状況は変わってきますが、今のところ若年層における新型コロナ感染症の発症、重症化、死亡リスクは低いといえます。ワクチン接種による心筋炎や髄膜炎の発症リスクを比較して、きちんと納得した上で判断したいところです。もちろん、3回目接種によって感染しにくくなると報告されていますので、接種が望ましいのは大前提です」(荒川氏)=後編につづく

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