東洋医学は、中国で自然哲学をもとに発展しました。欧米で自然科学をもとに発展した西洋医学とは、根本的な考え方に大きな違いがあります。
西洋医学における健康とはなにかといえば、それは体や心が一定の状態、つまり「恒常的」に保たれていることだとされています。
そのことはみなさんも、健康診断などで病院に行かれて経験されているかと思いますが、検査した数値に異常が出た場合、いかにその数値を基準値に戻すかといったことが治療の目的となるのが、西洋医学だと言えるでしょう。
風邪をひいた場合も熱が出たら解熱剤、咳が出れば鎮咳剤、痰が出たら去痰剤……と症状ごとに薬を出す、あるいは、解熱、鎮咳、去痰などがセットになった総合感冒薬を処方することが一般的です。
一方、冒頭でもお話ししたように、自然哲学をもとに発展した東洋医学では、数値といった絶対的基準を持ちません。その代わりに施術者の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を重視し、長い歴史に裏打ちされ蓄積された膨大な臨床観察から得た結果に照らし合わせ、総合的に判断。そして、その人にとってちょうどよい状態、調和が取れている状態(中庸)を目指して調整・治療を進めていきます。
さらに言うと、病原体と闘い効率よく排除できるように起こっている体の反応、「抗病反応」を適正化することを治療の目的とします。
東洋医学を正しく知って不調改善
西洋医学と何が違う? 調和が取れている状態=中庸を目指す
西洋医学が健康基準を「恒常性」にしているのに対し、東洋医学では「変動性」を健康の基準に置いているのです。
たとえば、有名な風邪の漢方薬、葛根湯があります。背中がぞくぞくして、頭痛がして汗が出にくい時に処方され、この“ぞくぞく”がなくなることで風邪が治るとされていますが、葛根湯は飲むといったん飲む前よりも体温が上がることも珍しくありません。なぜあえて発熱する患者に投薬して、体を温めるのかといえば、これも「抗病反応」を適正化するためなのです。決して熱冷ましではないということです。
このように西洋医学と東洋医学の違いを理解した上で、自分のライフスタイルに合った治療方法を選んでいただければと思います。