血液型と病気

血液型で異なる新型コロナウイルス感染症の重症化リスク 欧米の一流医学誌が報告

A型はコロナウイルスの重症化リスクが高い?
A型はコロナウイルスの重症化リスクが高い?

 血液型がA型の人は新型コロナウイルスの重症化リスクが高く、O型の人はリスクが低い--。そんな研究論文が2020年10月、世界で最も権威ある医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」に掲載され、世界中で大きな話題になりました。日本でもマスコミに広く取り上げられたので、覚えている人も多いと思います。イタリアとスペインの7病院の重症患者1610人と、健康者2205人のゲノムを調べたところ、重症化に関係する遺伝子が2つ見つかったというのです。

 ここ数年、ゲノム解析が高精度に、しかも安価にできるようになってきたため、病気に関連する遺伝子の探索に多用されるようになってきました。ちなみにゲノムとは、人のDNAに書き込まれているすべての遺伝情報のことです。重症患者と健康者の合わせて3815人のゲノムを調べてみたら、2種類の遺伝子が重症化と関係していることが分かったというわけです。

 そのひとつは3番染色体に載っている遺伝子でした。人の染色体は23対(46本)です。その3対目の染色体に載っている遺伝子が、重症化と関係していることが判明したのです。ただし、それがどんな働きをする遺伝子かは、いまのところ不明です。

 もうひとつの遺伝子は、なんと血液型遺伝子、つまりA・B・O・ABの血液型を決める遺伝子でした。そこで血液型と重症化の程度を調べたところ、イタリアでもスペインでも、A型が重症化のリスクが高く、O型は低いことが分かった、という次第です。A型患者は、他の血液型と比べて重症化リスクが約45%も高く、一方O型は約35%も低かったというのです。

 すぐには信じられないような結果ですが、その前の2020年3月には、中国の研究者たちが、世界で初めて新型コロナと血液型の関係について論文を発表していました。また4月には、アメリカの遺伝子検査会社である23andMeからも、同様の研究が発表されていました。どちらの研究でも、A型がハイリスク、O型がローリスクという結果でした。

 ですから、NEJMの論文よりも前から新型コロナと血液型との関係が指摘されていたわけです。それが世界的権威の医学雑誌が取り上げたという点で、マスコミからも大いに注目を集めたのでした。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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