幸先の良いスタートを切るための正月食事術

正月太りの意外な原因 寝不足は甘いお菓子に手を出しやすい

寝だめより昼寝を
寝だめより昼寝を

 年末年始に親戚や友達と集まって初詣や宴会を催し、寝る時間が少なくなってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか? 寝る時間が遅くなれば、当然、睡眠不足に陥ってしまいます。さらに睡眠不足が続くと、肥満の原因になってしまうことがあります。食事だけでなく、上手に睡眠をとることもまた正月太りを解消できるカギになってくるわけです。

 睡眠と肥満との関係はさまざまな報告がなされていて、睡眠不足によって食欲を旺盛にする「グレリン」というホルモンが多く分泌され、逆に食欲を抑える「レシチン」というホルモンの分泌量が減ってしまうことも原因のひとつと言われています。

 また、睡眠不足は食欲を増進するだけでなく、満腹感を得るまでの時間を長くすることや、深夜まで起きていることが原因でエネルギーの中でも特に脂質によるハイカロリー食が摂取されやすいこともわかっています。2013年に行われたコロンビア大学の研究では、標準体重の成人被験者の睡眠時間を5日間にわたって4時間または9時間に限定した後、脳の反応をしらべると、4時間睡眠に制限した群のみ、ピザ、ドーナツ、チョコレートバー、キャンディーなどのジャンキー食を見ると「食べたい」欲求が高まることが報告されています。9時間睡眠の場合には、差が見られなかったそうです。

 睡眠不足になることで、深夜までエネルギーをたくさん取り、起床後もハイカロリーなものを食べたくなる。その上、寒さでなかなか活動しづらくエネルギーが消費できない……年末年始はまさに負のスパイラルに陥りやすい時期とえいます。いつも通りの生活リズムを乱さないことこそが、肥満にならずに済む近道と言えそうです。

■30分昼寝でリズムを整える

 とはいえ正月休み中は思いっきり夜更かししてしまった……という人に解決策はないのでしょうか?

 まず思いつくのが徹夜後の「寝だめ」です。睡眠不足になると、ストレスホルモンといわれるコルチゾールの血中濃度が増加します。しかし、週末2日間の寝だめでは正常値にまで戻らないことが報告されています。

 さらに、寝だめは毎日、短時間睡眠するより健康に悪いという報告もあるのです。「熟睡」「寝だめ」「短時間睡眠(慢性睡眠不足)」の各グループで、長期間続くと糖尿病発症リスクが高くなるといわれるインシュリン感受性を調べたコロラド大学の報告によると、インスリン感受性が10%以上低下していた短時間睡眠よりも、寝だめは約30%も低下していることがわかったのです。

 また、健康な人が金曜と土曜の夜に寝ていられるだけ寝だめをした場合、夜に分泌されて眠気を誘うホルモンのメラトニンの分泌は、寝だめ前に比べて寝だめ後のほうが分泌速度、量ともに少なく、寝つきが悪くなってしまうということも報告されています。さらに恐ろしいことに寝だめをした場合、眠気度と疲労度が翌週の月曜や火曜に強くなることがわかり、仕事始めのだるさや鬱々とした気分の原因にもなってしまうのです。

 そこで提案したいのが「昼寝」です。これには賛否両論があると思いますが、夜遅く寝てしまった次の日はきちんと通常通りに起きて、お昼ごはんの後、午後1時~3時頃までに30分以内の昼寝をすると良いでしょう。 30分以内の昼寝であれば、浅い睡眠から覚醒するので目覚めも良く、作業効率が高まります。先ほどお話ししたメラトニンは午後1時~3時頃にも若干高くなるので、生理的に眠くなる時間帯なのです。逆に午後3時以降や30分以上の昼寝は、夜の睡眠に影響し、寝つきを悪くしますので注意してください。起き上がれなさそうという場合は、布団に入らず、机の上で突っ伏して寝るのも方法のひとつです。

 さらに夜の時間帯になったら、メラトニンの分泌を少なくしてしまう報告もあるテレビやスマホは寝る1~2時間前には見るのを止め、就寝時は照明をしっかり消すのがおすすめです。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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