肉腫は、左右の心房、大動脈や肺動脈といった血管など心臓のさまざまな場所に発生します。腫瘍が弁に食い込んでいるケースもあります。切除するために開胸したものの、すべて取り切れないからといって腫瘍をどこかに残したまま撤退すると、アッという間に再発してしまいます。以前、手術を終えた直後の入院中に再発した患者さんを目にしたこともあります。ですから、腫瘍は絶対にすべて取り切ることが重要で、これまでもずっとそれを目指して肉腫の手術を行ってきました。
腫瘍をすべて取り切るには、多くの場合、一部の動脈はつなげたまま心臓全体をいったん体外に取り出し、心筋の保護を行いながら心臓のパーツをいったんバラします。血管に腫瘍がある場合は、その血管をすべて切除して人工血管で作り直します。4本ある肺静脈をすべて付け根まで切除して、人工血管で再建したケースもありました。腫瘍が弁に食い込んでいる患者さんに対し、切除して人工弁に置換することもあります。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」