腰痛のクスリと正しくつきあう

気温が下がる冬は「こわばり」に注意 体を温めると改善する場合も

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 日本整形外科学会、日本腰痛学会が監修した腰痛診療ガイドラインによると、「腰痛は単一の疾患単位ではなく症状である」とされています。病気の名称ではなく、腰を中心とした痛みや張りといった不快感の総称なのです。

 腰痛の原因はさまざまで複数の要因が絡んでいるケースもありますが、85%は原因不明です。そのため、症状がひどい場合はまず痛みと炎症をやわらげるために薬と注射で治療を進めていくのが基本とされています。ただ、薬物療法はあくまで対症療法で、根本的な腰痛治療ではないのが現状です。状態によっては、薬だけでなく運動療法(理学療法を主体とするリハビリテーション)や手術などが必要な場合もありますから、痛みに苦しんでいる方は医療機関に相談してください。

 この連載では、腰痛に対して主にどのような薬が使われるのかを解説していきますが、その前に薬を使わずに症状の改善が期待できる方法を紹介します。

 気温が下がる冬は腰痛を訴える方が多くなる傾向が見受けられます。人間の体は冷えを感じると、熱を逃がさないように筋肉を収縮させます。これがいわゆる「こわばり」と呼ばれる症状です。また、冬は外出する機会も減少するため運動不足になりがちで座ったままの状態が続くことにより腰にさらなる負担がかかります。そのため、体を温めることで症状が改善する場合があるのです。

 まずはホットパックやカイロなどを使用して、体外から物理的に患部を温める方法を試してみてください。ただし、カイロなどで長時間温めていると低温やけどの可能性があるので注意が必要です。体温よりやや高めのものが皮膚の同じ場所に長時間接触し続けることで起こります。一般的には44度のものに約6時間接すると低温やけどになるとされています。とりわけ皮膚が薄くなっている高齢者は気をつけましょう。

 ほかにも、血行を促進する効果があるとされる食材を使った食事もおすすめです。ショウガに含まれるギンゲロールやショウガオール、トウガラシに含まれるカプサイシンなどは、発汗作用によって血流の改善を促す働きを期待できます。

 次回からは腰痛治療で使われる薬についてお話しします。

池田和彦

池田和彦

1973年、広島県広島市生まれ。第一薬科大学薬学部薬剤学科卒。広島佐伯薬剤師会会長。広島市立学校薬剤師、広島市地域ケアマネジメント会議委員などを兼務。新型コロナワクチンの集団接種業務をはじめ、公衆衛生に関する職務にも携わる。

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