手術が必要なのはごく一部。再発を繰り返したり、悪性度の高いタイプに変わったりするケースです。高齢で発症するほど悪性度が高くなりやすいこともあり、とにかくリスク分類が重要。若い女性は、自然に消えることもあり、若い女性の低リスクは経過観察を勧めるのです。
その点で、甲状腺専門病院・隈病院のデータが参考になります。甲状腺がんと診断された2153人を、直ちに手術を受けた974人と経過観察をした1179人に分けて追跡しました。その結果、手術を受けた人も受けなかった人も、甲状腺がんが原因で亡くなったケースはゼロでした。
超低リスクは1センチ以下で、低リスクは1.1~2センチ以下。ともにリンパ節や遠隔臓器への転移がないものです。
甲状腺は喉ぼとけの下にあり、成長や代謝に関わるホルモンを分泌。切除すると、ホルモン剤が一生必要で、発声に関わる神経が損傷されるため嗄声(させい=声のかすれ)が問題に。半年ほどで回復するケースもあれば、一生続くケースもあり、無視できません。手術の代償が大きいので、低リスク以下は経過観察が重要なのです。
Dr.中川 がんサバイバーの知恵