Dr.中川 がんサバイバーの知恵

韓国の女優パク・ソダムさんは切除も 甲状腺がんは経過観察でよしの根拠

甲状腺がんで手術を受けたパク・ソダムさん(C)Yonhap News Agency/共同通信イメージズ

 手術が必要なのはごく一部。再発を繰り返したり、悪性度の高いタイプに変わったりするケースです。高齢で発症するほど悪性度が高くなりやすいこともあり、とにかくリスク分類が重要。若い女性は、自然に消えることもあり、若い女性の低リスクは経過観察を勧めるのです。

 その点で、甲状腺専門病院・隈病院のデータが参考になります。甲状腺がんと診断された2153人を、直ちに手術を受けた974人と経過観察をした1179人に分けて追跡しました。その結果、手術を受けた人も受けなかった人も、甲状腺がんが原因で亡くなったケースはゼロでした。

 超低リスクは1センチ以下で、低リスクは1.1~2センチ以下。ともにリンパ節や遠隔臓器への転移がないものです。

 甲状腺は喉ぼとけの下にあり、成長や代謝に関わるホルモンを分泌。切除すると、ホルモン剤が一生必要で、発声に関わる神経が損傷されるため嗄声(させい=声のかすれ)が問題に。半年ほどで回復するケースもあれば、一生続くケースもあり、無視できません。手術の代償が大きいので、低リスク以下は経過観察が重要なのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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