最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

問題が起きればシステム改善 テーラーメードな医療のために

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 これまで「在宅医療」では、ただ治療するだけでなく、患者さんやご家族の要望や希望を聞き、その患者さんに合った方法を模索しながら、生活を丸ごと面倒を見るテーラーメードな医療を行っているとお伝えしてきました。

 つまりは患者さんの数だけ工夫や改善があるわけですが、それは訪問先に限ったことではなく、院内におけるシステムも頻回に改善しています。以前、そんな改善を劇的に促した問題に遭遇しました。

 あれは、開院して数年たった頃。患者さんが急増した時期で、定期訪問のみで100%埋まっている状態でした。そこに急な往診が3件入ったのです。

 当時は、院長である私以外の2人の医師は非常勤勤務。どちらも小さな子供を抱えており、急な対応はできませんでした。したがって、私と診療スタッフだけで対処するため、事前に訪問時間を予約していた患者さんにもその変更をお願いせざるを得ず、夜間になってからの訪問になってしまったりとご迷惑をおかけしたのでした。

 今思えば、問題点は明らか。診療ユニットがどこにいるか、患者さんの自宅の位置、患者さんの容体、処置に必要な物品がどの診療車に載っているか、優先して診るべき患者さんなどを把握し、うまくスタッフを振り分け、効率良く回らなければいけないのに、それができていなかったのです。

 それに対して、スタッフから上がってきた改善策はこうでした。

「まずは患者さんの家の位置をすぐに判断できるよう、都内の地図を町名まで頭にいれる」「患者さんの容体は医師に判断を仰ぐ」「往診で必要な物品は常に車に搭載しておく」「困った時に相談できるフローをあらかじめつくっておく」──。

 中でも、稼働している診療ユニットと密にコミュニケーションを取り、空いた時間を調節してさえいれば診察時間が変更になったり夜遅くならずに済んだことを反省。「今後はすぐに各スタッフの診療スケジュールを把握し、すり合わせをする」「タクシーの配車システムのように、全体を把握する役割を担うスタッフとしてルートマネジャーを設置する」などを、即刻行うことになりました。

 ルートマネジャーというポジショニングによって、役割責任が明確になり、他の担当者をサポートするという意識が芽生え、院内全体の一体感も生まれて調整がスムーズにいくようになりました。

 基本的に情報の一本化ができたため、たとえ急な往診の依頼が複数入ったとしても、その週のルートマネジャーに情報が集約され、すぐにルートの組み替えが可能になりました。

 患者さん側に立って改善を続け成長する在宅医療。これから求められる医療のカタチではないでしょうか。

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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