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アメリカで始まったコロナとの共生実験…行方はどうなる?

ニューヨーク市は全事業者へのコロナワクチン接種が義務化された(義務化に反対するデモ)/
ニューヨーク市は全事業者へのコロナワクチン接種が義務化された(義務化に反対するデモ)/(C)ロイター

 1月6日時点でのアメリカの新型コロナ新規感染者数は1日平均約61万人といまだ上昇中です。しかし、アメリカは国も自治体もロックダウンはしていません。入院者総数の11万人が、感染規模に比べて低いという判断によるもので、「コロナとの共生実験」が始まったと言っていいと思います。

 今回も感染が最も多いニューヨーク市、特にマンハッタンは、クリニックやテントで検査がいつでも無料で受けられる環境で、クリスマスから新年にかけてはどこも大行列で2~3時間待ちは当たり前でした。1日20万もの人が検査をするので陽性者が増えて当然ではあるものの、陽性率2割という数字は衝撃的です。

 私の周囲でも感染者が激増し、その多くはブースターも含めワクチン3回接種済みのブレークスルー感染でした。これはあくまで感覚値ですが、パーティーなど飲食を伴うイベントに参加して感染した人が目立ち、ブースター接種済みだとほとんど無症状か軽い風邪程度で済んでいるのに比べ、2回目のワクチンから半年以上経過していた人は、重症化しないまでも数日間高熱が続き、咳(せき)もひどいという印象です。さらに友人の看護師によれば、重症の入院患者はワクチンをまったく打っていない人ばかりだそうです。ブースター接種が免疫力を飛躍的に高めることは証明されているし、ブレークスルー感染があってもワクチンで重症化リスクは下がるということをニューヨーカーは実感していて、2年前のような恐怖はもうありません。それが、ロックダウンをしない根拠になっています。

 それどころか、CDC(米疾病対策センター)からは「陽性判明から5日で職場に戻ってOK」というガイドラインが出されました。経済優先という批判も受けつつ、市内の公立小中高ではセルフ検査キットを配布しながらの授業が始まりました。

 もうひとつ呼びかけられているのはマスクのアップグレードで、「KN95または不織布と布マスクで二重にして隙間をなくすこと」が強調されています。一方で大企業はリモート勤務の延長、グラミー賞が延期されるなど温度差もあります。

 そんななか、最も注目されるのは1月中~下旬とされるオミクロン株のピークで入院者がどれほど出るかという点で、ワクチンと大量検査による「コロナとの共生」が可能かどうかのひとつの指針にもなりそうです。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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