独白 愉快な“病人”たち

俳優・井上純一さん 尿管結石の激痛を振り返る「指一本動かすだけで全身に…」

井上純一さん
井上純一さん(C)日刊ゲンダイ
井上純一さん(俳優/63歳)=尿道結石

「尿管結石」になったのは結婚して間もない頃でしたから、33歳だったかな。30年も前のことなので曖昧な部分もありますが、とにかくものすごい激痛だったことは覚えています。なんでも男性が経験する“3大激痛”のひとつだそうで、その痛みは悪魔的でした。もう二度と経験したくありません。

 始まりは下半身にドーンとくる重く響く鈍痛でした。瞬時に思ったのは、「自分、変なことしたかな?」ということ。実際には身に覚えはないんですけど、なんとなく心配になるのは男の性ですかね。でもすぐに「イヤイヤ、何もしてない」と気を取り直して、しばらく様子をうかがいました。するといつの間にか痛みが消えていたので、「なんだったんだろう?」ぐらいの気持ちで過ごしていました。

 すると、その2~3日後にまた同じような鈍痛があり、その後も数回、繰り返しました。すぐに治まるので放置していたら、最初の鈍痛から1週間後、とうとうその日がやってきたのです。

 当時、横浜にアートギャラリーをオープンしたので、その日は妻と2人、車でギャラリーへ行きました。その帰り道の運転中でした。これまでとは比較にならない鋭い痛みに襲われたのです。

 すぐに車を路肩に止めて休んでみたけれど、治りそうもありません。それどころかどんどん痛みが増して、人生で初めて脂汗というものをかきました。さらに、これも人生で初めて痛過ぎて嘔吐する経験もしました。自分でも「もうこれはダメだ。入院だ」と思い、戸惑う妻に運転を代わってもらい、妻の知り合いの病院へとりあえず運んでもらいました。

 調べるとすぐに尿管結石とわかり、即入院となりました。その痛みたるや、指一本動かすだけで全身に激痛が走るほど。うずくまったままどこも動かせないのです。でも、この病気の不思議なところは、石がフラフラ動いている間は死ぬほど痛いのに、石が動かなければまったく普通でいられるところです。

■体外衝撃波では殴られるような痛み

 入院の翌日、無痛になった時、ふと「自分の知り合いの病院がいいな」と思い、退院を申し出ました。するとなぜか「何を言っているんだ!」と先生に激高されたので、こちらも腹が立って半ば無理やり退院しました。そして、なじみのある先生に診てもらったのです。

 当時の尿管結石の治療法は、ある程度の小ぶりの石の場合、水をたくさん飲んで尿と一緒に自然に流れ出るのを待つのが主流だったようです。でも自分の場合は、その先生の紹介で当時最新の治療だった「体外衝撃波結石破砕術」をすることにしました。衝撃波によって石を粉砕して、砂のようになった状態で尿とともに出すという方法です。体を傷つけることがないので入院は1日で済み、すぐに仕事にも復帰できました。今では珍しくないんでしょうけど、当時は全国で数台しか機器がなく、自分は埼玉の病院まで行って治療しました。

 恥ずかしかったのは手術台です。腰のあたりにバレーボール大の穴が開いているベッドにうつぶせで寝るんです。大事なところがちょうど出るそのベッドの下へ女性の看護師さんが入って、下から衝撃波を照射する部分に印を付けるんですよ。その時の恥ずかしさは忘れられません。照射の際の痛みもはっきり記憶に残っています。照射のたびに金づちで殴られるような痛みがあるのです。何回照射されたかは忘れましたが、麻酔されていたにもかかわらず、ガンガン殴られる痛みを感じました。時間にして30分ぐらいでしょうか。

 おかげさまで翌日には尿とともに流れてくれて、それからは一度も再発していません。年齢なりに健康です。強いて言えば、47歳の時に「痔ろう」で手術したくらい。病気が下半身に集中している感じですね(笑い)。

 病気から学んだことは「前触れなく突然やって来る」ということ。下半身の鈍痛が尿管結石につながるとは思ってもいなかったので、30代の自分は本当にびっくりしました。今言えるのは「鈍痛があったらすぐ病院に行け」ということです。

 尿管結石に関しては、水分不足と食生活が問題だったんだろうと思います。今は栄養が偏らないように適度に気を付けて、こまめな水分補給を心がけています。お酒は飲み過ぎないようにしています。

 お酒といえば、故西城秀樹さんは豪快に飲む人でした。自分は家が近所だったので、いつも飲みに連れていってもらいました。彼の享年は63。ちょうど今の自分の年齢です。そう思うと、なおさら若すぎる死だったと痛感します。自分もついつい飲み過ぎるので気を付けたいと思います。

(聞き手=松永詠美子)

▽井上純一(いのうえ・じゅんいち) 1958年、東京都生まれ。74年、ジャニーズ事務所に入所。75年に映画「はつ恋」で俳優デビュー。78年にエランドール新人賞を受賞し、NHK「雲のじゅうたん」をはじめ、ドラマ、映画に多数出演。88年にジャニーズ事務所を退所する。90年に結婚し、2006年に離婚。現在は株式会社NLTに所属し舞台を中心に活躍中で、脚本や演出なども手掛けている。

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