コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー

革新的がん医療実用化研究事業 岡山大が治験を進める「穿刺ロボット」

遠隔操作で針を穿刺できる
遠隔操作で針を穿刺できる(提供写真)

 医師がCT画像を見ながら、体表面から病変に針を刺して行う検査(生検)や治療のことを「CTガイド下IVR(画像下治療)」という。がんのラジオ波治療や凍結治療などの「アブレーション治療」が代表的な治療法として知られる。

 針の穿刺(せんし)のみで行えるので、患者の体への負担が少なく、短時間で終わることから、がん医療として需要が高まっている。しかし、CT装置の近くで穿刺を行う医師は防護衣を着けていても、CT撮影の放射線による被曝(ひばく)が避けられないという欠点がある。

 そこで岡山大学は医工・産学連携で、放射線の届かないCT装置から離れた位置から遠隔操作で針を穿刺できるロボット(Zerobot)を開発。2018年に人間の患者を対象とした臨床試験を実施。20年からは日本医療研究開発機構の「革新的がん医療実用化研究事業」として、薬事承認を目標とした医師主導治験を進めている。

 どのような仕組みのロボットなのか。代表研究者である岡山大学学術研究院医歯薬学域・放射線医学の平木隆夫教授が言う。

「ロボット本体をCT装置のすぐそば(本来、術者が穿刺する位置)に設置します。ロボットには自由に動かせるアームが付いていて、その先端に治療で使う針が取り付けてあります。そして、治験ではCT装置から4メートルくらい離れた場所で、術者は透明な遮蔽(しゃへい)板を挟んで椅子に座り、CT画像を見ながらコントローラーで操作するのです」

 18年の臨床試験では、10例の患者に対して生検を実施し、全例で腫瘍への穿刺に成功。また、術者への放射線被曝線量は、線量計による検出限界以下だったという。

 ロボットによる穿刺のメリットは、術者の被曝をゼロにできるだけではない。人の手による穿刺では、腫瘍に正確に穿刺できるよう、頻繁にCT撮影を行って穿刺角度などを確認しながら慎重に手技を進めることが多い。ロボットなら針が固定されているので、手ぶれのない高精度な穿刺が可能となる。

「術中のCTの撮影回数を減らせる可能性があるので、患者さんの被曝の軽減というメリットも期待できます。また、高精度の穿刺ができれば、治療時間が短縮できる上に、治療効果も高くなる可能性があります」

 現在進めている医師主導治験は、コロナ禍で若干遅れているが来年度中に終了予定。24年ごろの薬事承認、実用化を目指している。

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