いまの低侵襲手術ではここまでの対応は困難で、複数の心臓内治療を同時に行うことのエビデンスは確立していません。
■患者が切り捨てられる可能性
近年の心臓治療は、そうした大掛かりな外科手術と低侵襲手術が両極化してきている印象です。そのため、どちらかの手術はできても、もう一方はできない、といった偏った外科医がどんどんつくられている状況にあります。しかもその偏りは低侵襲化の方向で進んでいて、若手医師の多くは低侵襲化だけに意識が向いています。
こうした現状を見ると、近い将来、低侵襲治療しかできない医師ばかりが増えてしまうことが予想されます。そうなれば、「低侵襲治療で対応できない心臓病は治療しない」という時代がやってくるでしょう。患者さんが救いを求めて医療機関を訪れても、「カテーテルや低侵襲手術ができない人は治療対象外です」と切り捨てられてしまうのです。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」