進化する糖尿病治療法

痩せているのに糖尿病予備群…インスリン抵抗性が肥満者と同程度

痩せているのに…(C)日刊ゲンダイ

 そして着目すべきは、糖尿病予備群ともいえる病態である耐糖能異常の割合。痩せ形女性における割合(13.3%)は、標準体重女性のそれ(1.8%)と比べて約7倍高く、米国の肥満者における割合(10.6%)よりも高かったのです。

 研究チームは、さらに痩せ形女性の耐糖能異常の特徴を詳しく分析。インスリン分泌が低下しているだけでなく、インスリン抵抗性も中年肥満の人と同程度生じており、痩せているのに脂肪組織から遊離脂肪酸が出て全身にばらまかれている状態であるという結果が得られました。

 これまでインスリン抵抗性は、主に肥満の人の特徴とされてきました。また、痩せ形の糖代謝異常は、インスリン分泌が低下しているのが主で、インスリン抵抗性は関係ないと考えられてきました。しかし、痩せた若い女性の耐糖能異常も肥満の人と同様、インスリン抵抗性や脂肪細胞から脂質が遊離脂肪酸としてあふれ出すといった状態が生じていることが順天堂の研究で、世界で初めて明らかになったのです。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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