感染症別 正しいクスリの使い方

【ノロウイルス】嘔吐物の処理は次亜塩素酸ナトリウム溶液で対応

0.1%溶液は1回使い切りで作り置きは厳禁
0.1%溶液は1回使い切りで作り置きは厳禁

 ご家族がノロウイルスに感染された場合、嘔吐物の処理には注意が必要です。嘔吐物の中には大量のウイルスが存在し、感染源となるからです。

 今回は嘔吐物などの処理方法について説明します。まず、ノロウイルスに有効な0.1%(1000ppm)次亜塩素酸ナトリウム溶液を作ります。ハイターやミルトンといった次亜塩素酸ナトリウムを含む家庭用の塩素系漂白剤を希釈して作ることができますが、希釈方法はそれぞれの製品の濃度などによって異なります。各社ホームページなどで事前に確認しておくとよいでしょう。

 1回の汚物処理で、作製した0.1%溶液を2リットルくらい使うことになるので、たとえば原液の次亜塩素酸ナトリウム濃度が1%の場合、原液200ミリリットルを水1800ミリリットルで希釈し、全量2リットルとして使用します。次亜塩素酸ナトリウムは光などで分解しやすく、希釈した溶液を長期間放置すると効果も薄れてしまうため、作った0.1%溶液は1回使いきりで作り置きは厳禁です。また、作製した溶液をペットボトルに入れておく場合、誤飲事故にも注意が必要です。

 もうひとつ注意するポイントは換気です。次亜塩素酸ナトリウムは汚物処理などを行っている時に有害な塩素ガスを発生する場合もあるため、寒くてもしっかり換気する必要があります。乾燥した汚物からノロウイルスが舞い上がり、2次感染するケースもあるので、やはり十分換気しながら処理を行うべきです。 

 次に使い捨てのガウン(ない場合はポリエチレンの大型ゴミ袋に手・足・首を通す穴を開けて代用)、マスクと使い捨て手袋(ない場合は小さめのビニール袋で代用)を着用し、汚物を捨てるゴミ袋も準備します。

 その上で、いよいよ処理にあたります。嘔吐物を新聞紙などで広めに覆い、0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液をたっぷりかけ、10分間放置します。

 その後、新聞紙を外側から内側に向けて静かに拭き取りながら小さくしていき、用意したゴミ袋に捨ててください。この拭き取り作業を2回行います。拭き取り作業が終わったら、手袋↓ガウン↓マスクの順で外し、これもゴミ袋に捨てて密閉します。

 処理後は速やかに手、手首、腕を洗います。アルコールによる手指消毒だけでは不完全ですので、必ず流水で洗いましょう。

 次亜塩素酸ナトリウムは漂白剤なのでカーペットなどは脱色してしまう可能性があります。カーペットはスチームアイロンを使って数分間加熱すれば、表面の消毒が可能です。また、金属などはさびる場合があるので、作業後に再度水拭きが必要です。

荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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