最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

平穏で温かい思いや感謝の気持ちが伝わるみとりだった

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今は結婚し、同居する娘さん。「子供のころはよく父親に勉強を見てもらっていたおかげで難関国立大学の旧帝大にも進学できた。お父さんに感謝している」と話してくれました。

 無愛想で偏屈なところは昔からで、店番をしても武士の商法で不機嫌に客をあしらうこともあったといいますが、幸い愛想のいい奥さまがそんな夫を支え、店をもり立ててこられました。奥さまは20年前に亡くなり、遺骨はいまだお父さまの部屋に。「自分が死んだら好きにしていい」と言っているそうです。

 そんな患者さんも、もともと入院前にはかくしゃくとして近所の将棋クラブへ通い、駒を戦わせていたそうですが、退院後にガクッと足腰が弱くなり、外出もままならぬようになっていきます。

 ですが足腰を鍛えるリハビリや、肺活量を鍛える発声練習も積極的にやる気配はありませんでした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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