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肺<上>肺トレでやるべき2つの呼吸法とスクワット 専門医が解説

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 肺の健康状態や老化度を知る方法のひとつに、呼吸器内科で呼吸機能検査(スパイロメトリー)を受けることで分かる「肺年齢」という指標がある。1秒間に吐ける息の量から、実年齢(標準)と比べて自分の呼吸機能がどの程度か確認するための目安になる。

 肺年齢は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や、ぜんそくなどの慢性呼吸器疾患があると実年齢よりも高くなる。しかし、呼吸機能は肺に病気がなくても、20歳前後をピークに加齢とともに低下していく。肺年齢を若々しく保つ方法はないのか。

長生きしたけりゃ肺を鍛えなさい」(エクスナレッジ)の著者で、「みやざきRCクリニック」(東京都品川区)の宮崎雅樹院長(呼吸器専門医)が言う。

「肺の病気がなくても、『若い頃より息切れがしやすくなった』といった自覚があるのであれば、肺の老化が進んでいる可能性があります。そうした人は『肺トレ』を試してみるといいでしょう。肺トレは、呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)の方法をベースにした、主に健常者向けの自分で行う健康法のひとつです」

 呼吸リハは、COPDなどの患者が息苦しさなどを改善するために、医療機関で行われているもの。慢性呼吸器不全の主な症状は、体を動かしたときに呼吸が苦しくなる。階段の上り下りや入浴、トイレに行く、といった日常生活動作(ADL)が息苦しくてできなくなる。呼吸リハの最大の目的はこのADLの改善になる。

 まず動いても息苦しくならないようにするのが「呼吸訓練」。特別な呼吸法を行うことによって、息苦しさなどの症状を改善させる。また肺機能が低下すると、体を動かすのがつらくなるので、歩かなくなり下半身の筋力が低下する。弱った筋力を回復するための「運動療法(筋トレ)」も、呼吸リハの一部に取り入れられているという。

■口すぼめ呼吸

 肺トレでまず覚えてほしいのが、呼吸を楽にする呼吸法。さまざまな方法があるが、代表的なのが「口すぼめ呼吸」だ。①鼻から息を肺がいっぱいになるまで吸う。②口を軽くすぼめて、息をゆっくり長く吐く。ポイントは、目の前に火のついたロウソクがあることをイメージして、その火を消さないくらいの強さでゆっくり息を吐く。

「COPDやぜんそくは閉塞性換気障害といって、炎症を起こして狭くなった気管支がつぶれやすくなり、息をスムーズに吐き出せなくなります。そのため、肺の中に吐き出せない空気がたまり、息苦しさなどの症状が出るのです。こうした症状が出ているときに、口すぼめ呼吸を行うと呼吸が楽になります」

 ヨガなどでも基本の呼吸法とされている「腹式呼吸」も、呼吸リハでは昔から行われている。横隔膜を大きく動かして呼吸するため、空気が肺にいっぱい入って呼吸が楽になる。

■腹式呼吸

①座位または立位で背筋を伸ばし、鼻からゆっくり息を吸い込む。このとき、ヘソの下に空気をためていくイメージでお腹を膨らませる。②次に、口からゆっくり息を吐き出す。お腹をへこませながら、体の中の悪いものをすべて出し切るような感覚で、吸うときの倍くらいの時間をかけるつもりで吐く。1日5回くらいから始め、慣れてきたら1日10~20回を基本に行う。

 呼吸を楽にするには、呼吸法のトレーニングだけでは十分ではない。大事なのは全身の筋トレになる。特に太ももの筋肉が衰えてあまり動かない生活を続けると、呼吸で使う上半身の呼吸筋も衰えていくからだ。散歩やウオーキングなどを日課としながら、筋トレも習慣にするといい。

「肺の老化を防ぐ運動として最も勧められるのは、大腿四頭筋(太ももの筋肉)を効率良く鍛えられる『スクワット』です。やり方が正しければ毎日行う必要はなく、週3日くらいでも効果があるといわれています。無理のない範囲で、少しずつ始めてみてください」

 スクワットの基本的なやり方は、両足を肩幅くらいに開いて立ち、膝を曲げながら腰を落とした後、膝を伸ばしながら腰を元の位置に戻す。ポイントは腰を落とす際、できるだけ膝がつま先より先に出ないように注意すること。これを10回1セットとし、1日3セットを目安に行う。

 次回は「肺を老化させない食べ物」を紹介してもらう。

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