60歳からの健康術

自由診療歯科医が教える歯のケア(3)奥歯から抜ける人、前歯から抜ける人

写真はイメージ
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 いくら生真面目に歯磨きをしても、年を重ねるにつれ28本ある成人の歯は少しずつダメになっていく。しかし、歯の健康は全身の健康に大きく関わるため、厚労省と日本歯科医師会は1989年から、80歳まで20本の歯を残す「8020(ハチマルニイマル)運動」を展開している。

 その結果、2016年の8020達成者率は51.2%に増加したと報告されている。ちなみに65歳以上の日本人2万人以上を4年間にわたり調査したところ、死亡率は、20本以上歯が残っている人に比べて、10~19本の人で1.3倍、0~9本の人で1.7倍に上昇したとの報告がある。

 とはいえ、80歳で20本以上歯を残せなかった人は半数近くいるわけで、80歳を越した人の多くは歯を20本以上残せなくなるということだ。では、歯はどこから抜けていくことが多いのか?

「どこから抜けていくかは体格や咬むくせなどによって人それぞれですが、顔の形である程度の予想はできます。たとえば面長の顔の人は奥歯から抜けていくことが多く、丸顔あるいは四角顔の人は前歯から抜けることが多い。それは、あごの角度の違いや咬み合わせの深さなどにより、どこの歯に負担がかかりやすいかと咬合力が推測できるからです」

 問題は歯が抜けたときにどのような治療を受けるかにある。具体的にいうと、義歯(入れ歯)やブリッジにするか、歯科インプラントにするのか、だ。

「歯科インプラント治療とは、あごの骨にチタンなどのボルトを埋め込み、その上に人工の歯を作る治療のことです。私は患者さんの口腔内が可能な状態であればインプラントをお勧めしています。理由は入れ歯は年と共に歯肉が変化するのに合わせて作り替えていかなければならないからです。さらに入れ歯やブリッジはそれを支えている歯に過剰な負担がかかります。しかもケアが大変です。しかし、インプラントなら一度立ててしまえば自然の歯と同じように使えますし、残存歯の負担を軽減してくれます」

 患者の中には歯周病で人工歯を立てるための歯槽骨がやせ細り、インプラントができないケースもある。その場合、歯科医師によっては歯槽骨を人工骨を使って補強するやり方をとる。しかし人工骨は人間にとって異物であるため炎症が起きると厄介なことになる。

 それが最近では、自己血成分や特殊な膜を使って骨量を増やす新しい技術も普及し、より多くの人が安全にインプラント治療ができるようになっているという。

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