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新型コロナのパンデミックで子供の感染症が激減? 英で報告

ワクチン接種を受ける赤ちゃん
ワクチン接種を受ける赤ちゃん(C)ロイター

 新型コロナウイルスのパンデミックは、世界各国の小児医療にも大きな影響を及ぼしました。麻疹(はしか)やポリオなど、ワクチンの定期接種プログラムが中断された国も多く、1歳未満児の約8000万人に影響が出たそうです。ワクチンの定期接種が集団レベルで中断されることはまた、予防可能な感染症に対するリスクが懸念されます。

 一方で各国政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、都市のロックダウンに代表されるような社会的な感染対策を実施しました。人の流れが抑制され、感染に対する関心が高まることで、新型コロナウイルス以外の感染症リスクも低下する可能性があります。

 そんな中、小児感染症に対する新型コロナウイルスパンデミックの間接的な影響を検討した研究論文が、英国医師会誌の電子版に2022年1月12日付で掲載されました。この研究では、19種の感染症で英国の病院に入院した小児患者数を、新型コロナウイルスのパンデミック発生時(2020年3月~2021年2月)と、パンデミック前(2017年3月~2020年2月)で比較しています。

 解析の結果、19種の感染症のうち、腎盂腎炎(悪化した膀胱炎)を除くすべての感染症において、入院患者数の減少が認められました。入院数が最も減少した感染症はインフルエンザで94%の減少、次いで、はしかが90%の減少を認めました。

 新型コロナウイルスに対する社会的な感染対策により、他の多くの感染症リスクを低下させることが示されています。

 なお、腎盂腎炎による入院が減少しなかった理由として、論文著者らは新型コロナウイルスのパンデミックにより医療現場が逼迫し、膀胱炎に対する適切な診断や治療の遅延が影響したのではないかと考察しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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