上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

認知症予防の可能性が報告された「バイアグラ」使ってはいけない人

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 もちろん、今後計画されている臨床試験の結果をしっかり精査する必要がありますが、バイアグラが認知症予防の薬として使われる日が来るかもしれません。

 バイアグラは、もともとは狭心症の治療薬として研究・開発されていた薬です。ただ、臨床試験では狭心症に対してそれほど効果が認められず、中止となりました。しかし、その副次効果としてペニスに流れ込む血流を増やす効果が認められたため、ED治療薬として応用された経緯があります。

 こうしたことからもわかるように、バイアグラ=シルデナフィルには血流を改善する作用があるため、心不全の原因にもなる肺動脈性肺高血圧症の治療薬(商品名:レバチオ)としても使われています。また、スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究では、慢性の虚血性心疾患がある男性がバイアグラを服用していると、死亡や心筋梗塞のリスクが低下する可能性が報告されています。バイアグラといえばEDというイメージはすでに変わりつつあるといえるでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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