一般的に中高年の肩の痛みを「五十肩」と呼んでいますが、その中でも頻度の高い「凍結肩」について紹介します。これは明らかな原因がなく文字通り地面が凍結して固まったかのように著しい肩の可動域制限と痛みをきたす状態を指します。
肩関節は、二の腕の骨である上腕骨と、背中につく肩甲骨で構成されており、肩関節の中心には肩の可動性と安定性をつかさどる関節包という靱帯があります。私たちがバンザイしたり、ボール投げができるなど肩が自在に動くためには、この関節包がみずみずしく伸縮性に富んでいることが大事ですが、凍結肩では主に関節包に問題が生じています。
五十肩で来院された患者さんが、「手を膝の上に置いているような安静にしている時でも肩の痛みがある(安静時痛)」「痛くて夜も眠れない(夜間痛)」といった話をされると、まず凍結肩を疑います。
肩のレントゲンはスクリーニングとして必須ですが、骨の形は正常で特に異常はみつかりません。その上で、肩の可動域を調べます。①気をつけの姿勢から前方向へバンザイをしても水平程度しか上がらず、②小さく前へならえの姿勢から、肘を胴体につけたまま手を外側に開こうとすることがほぼできず、③気をつけの姿勢から背中に手を回してもベルトにも届かない--こういうとき、凍結肩と診断します。
凍結肩には、炎症期(疼痛期)、凍結期、解凍期と3つの時期があります。
患者さんが安静時痛・夜間痛を訴える場合、炎症期と判断しています。主な原因は、関節包が炎症を起こし、まるで火事を起こしたかのように真っ赤にただれているためです。風邪をひいて喉が痛いとき、鏡で喉の奥をのぞくと赤く腫れているのと同じ状態です。
凍結期では、伸縮性を持つ関節包が、火事が鎮まった後に残るススのように変化し、肩関節の中心の骨の間にベタッとこびりついた瘢痕になっています。火種はなくなったので安静痛・夜間痛はなくなりますが、可動域制限がひどいことと、動かしたときに生じる痛みが中心になります。
解凍期は、凍結期で制限された可動域が徐々に回復する時期を指します。
次回は凍結肩の各時期における考え方、治し方について紹介します。
五十肩を徹底解剖する