進化する糖尿病治療法

SGLT2阻害薬 日本で初めての慢性腎臓病治療薬として承認

倦怠感、息切れなどの症状にも注意(写真はイメージ)

 CKDが進行して腎臓が本来の機能を十分に果たせない腎不全に至ると、体内から老廃物を除去できなくなるので、人工透析や腎臓移植が必要になります。

 みなさんにしっかりと認識して欲しいのは、腎臓はある程度の段階を過ぎて悪くなると、正常な状態に回復するのは困難だということなのです。

 冒頭で、承認された新薬「フォシーガ」が、CKDの日本で初めての薬だと述べました。これまで、腎臓の機能に直接働きかけて良くするものはありませんでした。あるのは血糖値や血圧を下げ、腎臓の機能が低下していくスピードを落とすもの。早期を除けば、薬を用いてもCKDを「治す」ことはできなかったのです。

 同剤の第3相試験では、腎臓の機能を5段階のステージ(病期)に分けたうちのステージ2~4かつ尿中アルブミン排泄の増加を認める患者さんを対象に試験が行われました。ステージ1と2は早期発見で回復の余地ありの段階、ステージ3は腎臓の機能が健康時に比べて半分近く低下しており専門医による本格的な治療が必要な段階、ステージ4は腎臓の機能が30%以下にまで低下しており機能回復は不可で現状維持が治療目標の段階です。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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