がんと向き合い生きていく

AIによる胃内視鏡検査は患者に「不安」を残すのではないか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 患者は命がかかっています。仮に、内視鏡検査が麻酔なしで行われ、患者が覚醒した状態で一緒にモニターを見ていて、「AIはがん確率45%を示し、医師は生検をしなかった」とします。すると患者は、「AIはがん45%、医師は大丈夫だと判断して生検しなかった。医師を信頼しているが、それでも私はAIでは45%がんなのだ」と考えるでしょう。この先ずっと頭の中に「45%」という数値が、その不安が残ってしまうのではないか。そう思いました。

 さらに、AIが「%」を示すことで、医師がその数値に頼るようになった場合、プロの眼力が落ちてしまうのではないか? とも考えました。AIが眼力のない素人の医師に取って代わる、そのように時代は進むのかもしれません。

 AIの登場はいわば産業革命です。いずれにしても、最も大切なことは見落としがなく、正確な診断がなされることだと再認識したところです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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