感染症別 正しいクスリの使い方

【ノロウイルス】脱水症の対処は経口補水液を活用 常用はNG

常用は避けること
常用は避けること

 ノロウイルスには、直接有効な抗ウイルス薬はなく、基本的には症状に応じた対症療法を行うことになります。特に下痢や嘔吐に伴い脱水症状を起こすケースが多く、子供や高齢者の脱水症は致命的になるリスクもあるため、早めに医療機関を受診しましょう。

 脱水時には水分と一緒に塩分も失われている場合が多いので、同時に摂取することが有効です。脱水症の治療に用いられる経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)は、脱水時に不足している水と塩分を含み、それらの吸収速度を高めるために糖質が少量配合された飲料です。市販のスポーツドリンクは糖分が高めで塩分が低いので、下痢がある時の脱水補正には向きません。糖分が高いと浸透圧により下痢が悪化する場合があり、塩分が低いと特に乳幼児では低ナトリウム血症を起こすことがあります。最近はORSも市販されていますが、インターネット上ではいろいろなORSの作り方が紹介されていますので、参考にしてみてください。

 また、よくある誤解として「水を飲むから下痢をする」や「吐いていると口からは飲めない」といった見解を耳にします。しかし、下痢をしたり嘔吐したとしても、水分や塩分はそれなりに吸収されます。脱水時はORSを飲める時に飲むよう心がけましょう。

 小さなお子さんには、スプーンでゆっくりと飲ませるとよいでしょう。吐いてしまったら、10分ほど待ってから繰り返し飲ませてください。

 ひとつ注意点があります。ORSは脱水症の治療に用いられるべき液体で、常用するものではありません。連日服用すると、塩分の取りすぎになって高血圧につながるリスクもありますので注意が必要です。

 日本では風邪をひいた時に「おかゆに梅干し」を食べる習慣があります。海外では野菜スープを取る国もあるようですが、これらも水分と塩分、そして糖分が含まれており、発熱などによる脱水時にはとてもよい食事であると考えられます。先人の知恵とでもいいましょうか、病気の時にはORSに近い組成の食事を取る習慣が世界中であるのには驚くばかりです。

荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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