東洋医学を正しく知って不調改善

鍼灸はなぜ効く?そのメカニズムはどのようなものなのか

適切なツボに鍼灸で刺激を加えていく
適切なツボに鍼灸で刺激を加えていく(C)日刊ゲンダイ

 鍼灸がなぜ効くのかを簡単に説明すると、体が不均衡(アンバランス)になった状態を、鍼灸の刺激によって元の整ったバランス状態に戻すことができるからだと言えるでしょう。

 東洋医学ではこの体の均衡(バランス)を非常に重要視しています。そして、このバランスを診る場合も、さまざまな心身の状態を診ながら原因を探っていきます。

 時にそれは代謝や内臓自体の機能が低下している場合もあるでしょうし、栄養など体に必要なものが不足している状態に陥っていたり、逆に過剰になり過ぎたりしている状態の時もあるでしょう。また精神が高ぶったり沈んだり、体温が低下し過ぎたり熱し過ぎている場合もあります。

 ですから体調不良を訴える患者さんに対しては、問診したり触診や舌診により、どこの機能が不均衡なのかをまず探っていき、次にその症状に合わせて、整えやすい局所にある適切なツボに、鍼や灸で刺激を加えていくわけです。

天野陽介氏
天野陽介氏(提供写真)
まだ完全に科学的に解明されているわけではない

 そしてその刺激により、もともと体に備わっている調節機能を促して整えるわけですが、その機能はさまざまです。

 たとえば過剰な痛みの伝達を抑制する「疼痛抑制系」や、血圧や呼吸数に心拍数や体温といった体内の特定の機能を自動的に調節する「自律神経系」、さらには体の働きを調節する化学物質をつかさどる「ホルモン系」、また細菌やウイルスなどの微生物、あるいは「異物」と呼ばれる自分の体にはもともとないもの(非自己)から体(自己)を守る「免疫系」といった、いずれも身体の循環・代謝や働きに関わる重要機能です。

 とはいえそんな体を整える効果のある鍼灸ですが、長い年月に裏打ちされた実績によって行われる部分も多く、実はまだ完全に科学的に解明されているわけではありません。ですが、現在は鍼灸に関する研究が盛んに行われており、今後は新たに解明されてくる部分も増えていくものと思われます。

天野陽介

天野陽介

日本医学柔整鍼灸専門学校鍼灸学科専任教員。北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部客員研究員も務める。日本伝統鍼灸学会、東亜医学協会、全日本鍼灸学会、日本医史学会、日本東洋医学会所属。

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