血液型の分布が地域によって違うのはなぜか。当時の科学者たちは、さぞかし頭を悩ませたでしょう。そんな中からひとつの仮説が生まれました。「自然淘汰の結果ではないか」という仮説です。
つまり、それぞれの地域の感染症(風土病)に対して、強い血液型と弱い血液型があるのではないか、と考えたのです。たとえばO型は熱帯地域の風土病に強く、A型は弱いので、アフリカや中南米などではA型が淘汰され、O型が多く残ったと考えると、進化論的に矛盾なく説明できそうです。そこでこの仮説に基づいて、第1次世界大戦後にイギリスを中心に血液型と病気の関係を明らかにしようという研究が始まり、今日まで連綿と続いています。
研究が始まった当初は、方法論が不完全だったり、血液型の検査自体が不正確だったりしたため、期待されたような成果は得られなかったのですが、さまざまな改良が加えられた結果、今日までにマラリアやコレラなどが血液型と深く関係していることが分かってきました。また同様の研究が、イギリスから他の国々に広まりました。今日では新しい病気が見つかると、すぐに血液型との関係を調べるのが、海外においてはいわば医学の定番のひとつになっています。

地球規模で見た血液型の分布と感染症「北A/南O、西AO/東B」
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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。