年を取るにつれて気になるのが、認知機能の低下です。少し前のことが記憶できない、言葉がなかなか出てこない、計画を立てて物事を実行できない……。加齢による脳の神経細胞の減少による記憶や思考への影響は、60歳を越えると次第に進んでいきます。
人間の活動の司令塔である脳の働きを高めて、認知機能の老化を防ぎ、生涯現役を目指しましょう。
薬膳において、脳のパワーアップに威力を発揮するのが「くるみ」です。中国では古来、実の形が脳と似ていることから、脳を滋養する「補脳」効果が高いとされています。脳の老化防止に欠かせない「健脳ナッツ」なのです。
また脳の働きは、中医学で老化をつかさどる臓器である「腎」との関わりが深く、くるみは腎の働きを高める作用もあります。脳だけでなく、全身の老化防止にも優れた効果があるのです。
さらに、くるみは人間のエネルギー源である気を補い、滋養強壮にもよい食材なだけでなく、免疫力を高める働きもあります。体を温める効果もあるので、寒さが募るこの時季にはとくにおすすめです。
ほかに腰痛、便秘、頻尿の改善にも役立ちます。
また、女性にとってはシワ改善といううれしい効果も期待できます。70歳を過ぎても、10代の肌の美しさを保っていたという清王朝末期の女帝・西太后は、くるみを欠かさず食べていたといわれています。
くるみの健脳パワーをさらに高めるなら、「血を補う食材」との組み合わせがおすすめです。
中医学で血は、全身に流れて体の隅々にまで栄養を与える液体と考えます。そして、脳の滋養に欠かせない存在なのです。
血を補う働きがある、カツオ、マグロ、イカ、ホウレンソウ、小松菜、ニンジン、黒ごまと組み合わせるとよいでしょう。栄養学的にも良質なオメガ3脂肪酸を豊富に含むくるみは、シニアにとって手軽に栄養を取れるうれしい食材です。低栄養は、認知機能にも影響します。小腹がすいたときやおつまみにつまんで、しっかりと栄養を補給しましょう。
くるみは刻んで料理に使うのもおすすめです。サラダ、炒めもの、煮物などに加えたり、トーストやヨーグルトにトッピングするとおいしくいただけます。
■脳の働きを高める高齢薬膳
脳活サラダ
脳の働きを高めるくるみと、脳の滋養に欠かせない血を補う食材のホウレンソウ、カツオ、黒ごまを組み合わせたレシピ。冷凍のカットホウレンソウ、そしてカツオはツナ缶を使えば手軽に完成します。オリーブオイルの風味で、食が進むサラダです。
【材料】
●カットホウレンソウ(冷凍) 150グラム
●ツナ缶(70グラム) 1缶
●くるみ 20グラム
●ドレッシング(しょうゆ・オリーブオイル=各大さじ1)
●黒すりごま 大さじ1
【作り方】
ホウレンソウを袋の表示に従って解凍し、缶汁を切ったツナ缶とともにボウルに入れ、ドレッシングを加えて全体を混ぜる。器に盛り、粗く刻んだくるみをのせ、黒すりごまをかける。
健康長寿に役立つ高齢薬膳