60歳からの健康術

自由診療歯科医が教える歯のケア(4)“歯なし”を放っておくとどうなる?

写真はイメージ
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 これまで歯のケアについて紹介してきた。しかし、いくらケアしても年齢を重ねるうちに歯周病や虫歯などにより歯を失っていく。いずれ、入れ歯やインプラントを検討しなければならない。そのとき、どう考えたらいいのか? 自由診療歯科医で「八重洲歯科クリニック」の木村陽介院長に聞いた。

「最近は歯がないことへの危機感が薄い人が多いのに驚かされます。60歳くらいまではそれでも平気だったのかもしれません。しかし、歯茎を失ったままにしておくと隣の歯が倒れてきたり、下の歯がない場合は上の歯が、上の歯がない場合は下の歯に圧がかからないために歯が出てきます」

 結果として歯を失えば噛み合わせも悪くなる。寝ている間に歯ぎしりをするようになる。顎の関節へも負担がかかるようになる。つまり、ゆっくりだが着実に歯全体が悪くなるという。

 歯を失う最大の原因は歯周病だが、歯科医院でしかできない歯茎の下の歯垢の除去や噛み合わせの調整を定期的に行っていないことも原因になる。また、治療の仕方によっては歯が長持ちしない場合もあるので注意が必要だ。たとえば虫歯治療で歯髄を取る際に根の先まできちんと治療できていないことが原因になるケースも多いという。

「しかも、最近は歯全体を覆うようにかぶせる人工の歯(クラウン)をより白くみせるために厚めのものを使う歯科医院が増えています。そのため患者さん自身の天然歯をより大きく削らなくてはならず、治療した歯が以前に比べ長持ちしづらくなっているのです」

 最近の自由診療では治療が必要な歯の写真を特殊なカメラで撮影し、そのデータを基に歯の材料となるブロックを自動で削り出す機械が普及。歯科技工所に依頼しなくてもその場で白いクラウンやインレー(詰め物)ができるため、治療する時間のない患者に歓迎されている。しかし、従来のやり方なら歯科技工士が時間をかけて患者の歯に合ったクラウンを作れるのに対して、機械だとある程度の型にはまった、やや厚みのあるクラウンしか作れない。そのため、それをかぶせるにはある程度患者の歯を単純な形にする必要があり、より大きく削らざるを得ないとされる。結果的に歯の歯根が割れやすくなるリスクを気にする歯科医師もいるという。

「いずれにせよ、歯を失ったら、すぐにインプラント、入れ歯、ブリッジで失った歯をカバーすることが重要です」

 たとえば、なくした歯の両側を削るデメリットはあるが、前歯なら4本を失ったとしても犬歯と犬歯との間でブリッジをかければある程度持たせることができる。奥歯でなければ小臼歯を失った場合でもブリッジを使えば長期間対応できる。

 いま、抜けた歯があるという人は放っておかずにすぐに治療することだ。

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