60歳からの健康術

自由診療歯科医が教える歯のケア(5)インプラントをどう考えるべきか?

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写真はイメージ(C)PIXTA

 インプラントとは金属などを顎骨に植えこんで咬合(こうごう)を回復する人工歯根のことをいう。きちんとしたインプラントなら天然歯と同じように硬い食べ物でも噛めるし、食べ物がおいしく食べられる。入れ歯で感じる違和感もない。

 しかし、インプラントは怖いもの、高いものでインプラントを勧める歯科医は金儲けが目的だと信じ込んでいる人も少なくない。過去にデタラメな治療をして訴えられ、世間を賑わせた歯科医がいるからだ。そのうえ自由診療で行われるため、1本の治療費がウン十万円もする。その治療費も歯科医によってまちまちだ。

 そんなインプラントはどう考えたらいいのか?自由診療歯科医で「八重洲歯科クリニック」の木村陽介院長に聞いた。

「私は20歳以上で歯を失ったらインプラントを検討した方がいいと思っています。もちろん、部分入れ歯でカバーできる場合もある。しかし、部分入れ歯を装着する場所によっては、支える健康な歯に負担がかかりその歯を失うリスクが予想されるケースもある。そんなときはインプラントを検討すべきだと思います」

 総入れ歯ではどうか。公的医療保険でまかなえる中には、外側から見てもまったく総入れ歯とわからず、違和感なく使えるものもある。しかし、相談を受ける人の総入れ歯は粘膜への適合精度が悪く、上下が理想的に噛み合わないものが多いという。

「材料や技法に制限がなく自由診療で作れる総入れ歯の中には立派なものも多い。それでも、作った当初はよくても年を重ねるうちに合わなくなります。義歯が合わなくなる理由は、歯が失われたことで歯根による歯槽骨への刺激が失われ、歯槽骨がやせていくからです。しかし、インプラントはその心配がない。私は長い目で見れば、しっかりしたインプラントを作る方が快適だし、安上がりだと思います」

 そのためには、インプラントを支える十分な骨量があるのか、骨の厚さ、深さ、くびれはどうか、糖尿病などで感染のリスクがないかなど、正しい診断をしてもらったうえで、しっかりした技術を持った歯科医に作ってもらうことが必要だ。

「そういうインプラントは、大抵は長持ちします。実際、チタンを使った世界最初のインプラントは50年以上機能し続けたことが記録されています。それでも、すぐにダメになる場合がある。定期的に歯科医のチェックを受けないことも原因のひとつです」

 インプラントは顎の骨に埋め込まれているが、歯周病はその顎の骨を溶かす。

 そのため、インプラントをした人は歯周病の状況を年に2~3回はチェックすべきであり、定期検診が必要だ。

「義歯にすると天然歯の咀嚼(そしゃく)力が半分以下に低下するといわれ、肉料理や硬いものが食べにくい。しかも、総入れ歯では上顎に分布する『味蕾(みらい)』と呼ばれる味を感じる器官が樹脂製の床に覆われ、食べてもおいしさを感じにくいとされています。全部でなくても数本インプラントを入れて義歯を支えると、義歯は安定し義歯を長持ちさせることもできます」

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