新型コロナ第6波をどう過ごすか

感染再拡大のいまこそ日本人は「ファクターX」を取り戻せ

感染対策の基本に立ち戻る(写真はイメージ)/
感染対策の基本に立ち戻る(写真はイメージ)/(C)PIXTA

「あくまでも私の印象ですが、都心では以前ほど感染の勢いは感じません。感染リスクの高い行動をしている人はひと通り感染。濃厚接触者の中に感染者がいて、患者数を増やす可能性があるので簡単には言えませんが、ピークアウトに向かっているのではないでしょうか」

 こう言うのは都心で診療所を営み、新型コロナ患者と連日向き合っている内科医だ。

 患者は6歳以下の子供を含め多くは軽症で、ほとんどは解熱鎮痛剤などの対症療法で体調が回復しているという。

「まだ世界中で感染者数をカウントしていて、重症化する人もいるので警戒は必要です。ただ、コロナ以前から重い病気で通院しているお子さんや高齢者は要注意ですが、そうでない人は熱が出てもアタフタする必要はほぼないと思います」

 確かに最初に第6波が襲った沖縄県では、1月15日の1829人をピークに新規感染者数は減少、2月4日には11日連続で前の週の同じ曜日を下回り709人となっている。とはいえ、1日当たりの新規感染者が東京では2万人を、全国では10万人を超えた。心配になるのは当然だ。何に注意すべきなのか? 公衆衛生の専門家である岩室紳也医師が言う。

「いま一度、感染経路の分析とそれに対応した感染対策の基本に立ち戻り、しっかりやる、これに尽きます。例えばマスク。マスクは着けてさえいればいいと思う人がいますが間違いです。子供たちがしがちなようにウイルスが付着しているであろう手でマスク表面を触ってはいけません。コロナ前にある中学校でインフルエンザ期にマスクをしている生徒とそうでない生徒の感染の違いを調べたところ、マスクをしている生徒の方が感染者が多かった、との報告を受けたことがあります。原因はマスクの扱い方にあったと思っています」

■用心深い行動こそが身を守る

 ワクチンも同じだ。インフルエンザワクチンを打った人でも何度でも感染する人はいた。

「ワクチンは感染予防ではなく症状を軽くするためのものだから当然です。本来ワクチンはそういうものです。今回もワクチンを打ったからといって感染しないなんて思ってはいけなかったのに、ワクチンパスポートを誤解し、一部にワクチンを過信して感染リスクの高い行動を取る人がいた。オミクロン株という感染力がより強い変異株が出現したとはいえ、感染拡大に拍車をかけたのは、それが一因です」

 そう考えれば、いま私たちがやるべき感染対策はハッキリしている。ワクチンの有無にかかわらず飛沫の交換が起こらないように人と人との距離を空けるか、マスクは不織布のものを装着し、マスクの表面は触らない。食事の直前に手洗いをする、換気も空気が滞りやすい場所をしっかり考え、換気と排気の対策を練る。

「これらをひとつだけでなくすべてしっかりやる。そうすれば感染リスクは確実に下げられるはずです」

 しかし、これらの対策はこれまでも行ってきた。それでも感染拡大している。無駄ではないのか?

「私はそうは思いません。2月上旬、日本とフランスの1日当たりの新規感染者数はそれぞれ9.6万人と30万人です。一方、人口は日本の1億2686万人に対してフランスは6513万人ですから、人口比でみれば日本の新規感染者数は60万人近くであってもおかしくない。そうならないのは肥満になりにくいなどの遺伝的要因があるうえに、キレイ好きで真面目な国民性だからです。しかし、それが大きく揺らいだ結果が感染爆発につながった。日本人が新型コロナに強い特別な存在だとしたら、その原因となるファクターXとは日本人のそうした生活習慣や気質です。私はいま一度それを取り戻すべきだと思うのです」

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