最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

働くスタッフはどのような選考手段・方法で採用されているのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 在宅医療に従事する医師や看護師をはじめとしたスタッフは、いったいどんな人たちなのか? こんな素朴な疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

 そこで当院で働くスタッフが、どのような選考基準や選考方法で採用されているのかを紹介したいと思います。

 ちなみに昨年は延べで56回面接をしています。平均すると週に1回は面接を行っている計算です。採用募集している業種は、医師(常勤・非常勤)、国家資格者(看護師、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、救急救命士、管理栄養士ら)、医療事務、バックオフィススタッフ──と、当院のすべての部門にわたっています。

 その場合の選考方法ですが、当院では3段階の選考を行っています。

 まずは書類選考、次にオンライン面接、そして診療同行(一日職場体験)の順番となります。

 選考するポイントとしては、まず字がキレイか、職歴の多さ、メールがタイムリーに返ってくるか、メールや採用会社の管理画面でやりとりする場合の文面の内容に違和感がないか、など。基本的な部分での判断を、まず見ます。

 特に本人の職歴では、そこにストーリーがあるかも見ています。ただ職歴が多くても、なぜその職歴なのか。相手を納得させられる説明が重要だと思っているからです。

「オンラインで、在宅医療に向いているかどうかを見分けられるのか?」という質問をよく受けますが、私としては見分けられると思っています。

 それは、在宅診療において求められるスキルや態度は、「どんなことが起こっても、手持ちの札でなんとかしなければならない」ということだからです。

 例えば、家にPCがない、ネット回線が不安定、そもそもオンラインをやったことがないなど求職者にとって置かれている状況はさまざま。そのときに、家にPCがないから対面面接にしてくださいと言うのか、携帯のLINE通話ならできるので、LINEでお願いできませんかと言ってくるのか……。面接が始まる前の段階から、面接に臨む姿勢といったものが垣間見える。そんなことも全て判断材料にしているわけです。

 こうして面接をクリアしたら、次に診療同行です。医師や診療パートナー(国家資格者)だけでなく、仕事が始まれば患者さんと直接話すことがない事務スタッフにも体験してもらいます。コミュニケーション能力を測ることができますし、求職者の本質も見えてきます。

 私たちに質問をしてくるのか、主体的に患者さんの情報を集めようとする姿勢があるのか、患者さん宅に上がるときに靴をそろえて脱ぐのか。また、少しでもスタッフを手伝おうとして「かばんを持ちましょうか」と言ってくれるかなど、見るべきポイントはたくさんあります。

 そして最後に、一番大切なマインドである「患者さんの生活全てを丸ごと面倒見るという覚悟があるのかどうか」を見極めるようにしています。

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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