独白 愉快な“病人”たち

園子温監督が心筋梗塞を振り返る「もう少し病院が遠かったら死んでいたかも…」

園子温監督(提供写真)

 道中は上り坂です。さすがに途中で休もうと思っていたら、そういう時に限ってくるんですね“死の使い”が……。ものすごく足の速いお婆さんが気持ちよく僕を追い越していくのです。なんだか悔しくて「負けてたまるか」という気持ちになって、そのお婆さんと競ってしまったのです。

 だいぶ息を荒くしながら郵便局で小包を出した帰り道、動悸が止まらなくなりました。「いつものやつだ」と思って、自宅に着いて水を飲んだのですが、飲んだら余計に動悸が強くなってきて「これは危ないやつかな」と感じ始めました。さらにどんどん苦しくなってきたため、病院にいる妻に電話をして「心臓が変だ」と訴えました。すると、妻から「とりあえず玄関の外に出るように」と指示があり、苦しさの中で四つん這いになりながらなんとか外まで行った辺りでもうしゃべれなくなりました。

 その後、妻が手配してくれた救急車が来て病院に運ばれました。でも、乗せられてサイレンが鳴ったと思ったら、すぐ鳴りやんでしまった。よく考えたら、救急病院は家のすぐそば。だから助かったのだと思います。

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