コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー

AIを活用した最新CTは何がすごいのか 低線量と高画質を両立

キヤノンメディカルシステムズ提供
キヤノンメディカルシステムズ提供

 病気の画像診断に用いられるCTは、人体を透過したX線のデータを円周状に収集し、画像再構成処理によって断面画像を取得している。照射するX線量が多ければ高画質が得られるが、患者の被ばく量が増える。

 一方、X線量を低く抑えれば被ばく量は低減するが、ノイズが増加して画質が劣化するという相反関係がある。

 この課題を解決すべく、各メーカーは低線量でありながら高画質を実現する「CT画像再構成法」の改良開発を続けている。国内のCTシェアの過半を握る「キヤノンメディカルシステムズ」(栃木県大田原市)は、2011年に「AIDR-3D」、15年に「FIRST」という画像再構成技術を開発してきた。

 そして、18年には世界で初めてAI(人工知能)のディープラーニングを用いて設計した深層学習応用再構成法「AiCE」を搭載したCTを販売した。

 簡単に言えば、CTデータをディープラーニングの技術を使ってノイズだけを選択的に除去した画像へと再構成してくれるのだ。同社・CT事業部の原田智和部長が言う。

「AiCEの開発では、数十万枚のデータをディープラーニングにおける学習用データとして利用しています。低線量で撮影された低品質データから分解能を落とさず、ノイズ成分のみを低減できるよう、ターゲットとなる教師データ(『例題』に対し『正解』に相当するデータ)には当社がこれまで培ってきた再構成技術を応用して作成された高品質データが用いられています。こうして構築したネットワークをCT装置に搭載することで、さらに低線量・高画質、かつ短時間の処理が可能となりました」

 撮影時の被ばく低減については、放射線科医によって同社の従来の「AIDR-3D」と比較した研究結果がいくつかある。

 それによると、撮影条件により、腹部CTでは「約30%低減」、冠動脈CTでは「約40%低減」、小児CTでは「約50%以上低減」できると報告されている。

 また、画像の再構成処理に要する時間は、撮影条件によって異なるが、同社の従来の「FIRST」よりも3~4倍速く処理できるという。

「常に動いている心臓は、CTが苦手とする臓器のひとつですが、当社の『320列CT』では0.2秒台の撮影で検査が可能です。これにAiCEを適用することで短時間かつ、さらなる低被ばく撮影が可能となります。また、がんのフォローアップなどで複数回の撮影が必要となる検査でも、撮影ごとのX線量を低く抑えられるので、患者さんのメリットはより大きくなると考えております」

 同社では、AiCEを搭載した「MRI」や「PET-CT」の販売も展開。X線を使わないMRIでは、大幅なノイズ低減と検査時間の短縮ができるという。

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