医者も知らない医学の新常識

現代を代表する病名は「孤独」?死亡リスクが肥満並みに上昇

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「現代人は孤独だ」というのは一昔前から言われていたことですが、今や孤独は現代で最も多い「病気」の一つとしてとらえられるようになってきています。症状としての孤独は、人が他人と交流を持ちたいのに、それがかなわないことから生まれる、とてもネガティブな感情のことです。よく似た言葉に「孤立」というものがあり、こちらは社会環境などによって、他人と関係を持てない状態にあることです。

 孤立があると、孤独が生まれ、それが長引くと病気になるのです。2015年の研究によると、慢性の孤独はそれだけで死亡リスクを26%上昇させると報告されています。これは肥満や運動不足と、同じくらいの健康影響です。

 今年のブリティッシュ・メディカル・ジャーナルという一流の医学誌に、病気としての孤独の有病率を、世界113カ国で解析した論文が掲載されています。それによると、思春期の孤独の有病率は東南アジアでは最も低く9.2%で、ヨーロッパの地中海沿岸地域では14.4%の高率でした。ヨーロッパでの分析では、孤独の患者は北欧で低く、東欧諸国では高いという特徴が見られました。こうした研究はまだ始まったばかりですが、日本でも「孤独・孤立対策担当大臣」が任命されているように、孤独は大きな健康問題であるとともに、優先して解決するべき社会問題でもあるのです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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