五十肩を徹底解剖する

凍結肩のリハビリと内視鏡手術の中間の治療「非観血的関節受動術」とは

写真はイメージ

 今回は中高年の肩痛で頻度の高い「凍結肩」に対する治療法、非観血的関節授動術についてお話しします。

 凍結肩の硬さを取る治療としてリハビリや内視鏡手術を紹介してきましたが、今回の治療法は、その中間に位置します。

 まず私たちが痛みを感じるためには、全身に伸びる神経の働きが大事です。肩周辺に伸びる神経が、肩の異変を痛み刺激として捉え、その情報が首を経由して脳に伝わり「痛い!」と感じます。

 そこで脳から肩に伸びる神経に対し、途中の首のところで神経にブロック注射をすることで、肩周辺の痛みを感じなくさせるのです。局所麻酔と比べると広く深い範囲の痛みを感じなくさせますが、全身麻酔と比べると目が覚めている状態が違います。

 このブロック注射の後、医師が腕をあらゆる方向に愛護的かつやや強めに動かし、固まっている肩の深部にある靱帯(関節包)を外側から引き伸ばすことで一気に動きを取り戻すのです。皮膚を切らないため血を「観る(観察する)」ことなく関節に動きを授けられるので「非観血的」関節授動術(サイレントマニピュレーション)と呼びます。

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安井謙二

安井謙二

東京女子医大整形外科で年間3000人超の肩関節疾患の診療と、約1500件の肩関節手術を経験する。現在は山手クリニック(東京・下北沢)など、東京、埼玉、神奈川の複数の医療機関で肩診療を行う。

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