がんと向き合い生きていく

本田美奈子.さんの歌を聴いて思い出す「バンダナ贈呈式」

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 10年2月15日のことです。都立駒込病院で、本田美奈子.さんの母親である工藤美枝子さんと「LIVE FOR LIFE(LFL)」のスタッフによるバンダナの贈呈式が行われました。駒込病院は、本田美奈子.さんが治療を受けた病院ではないのですが、白血病患者の骨髄移植が日本で最も多く実施されている病院で、バンダナ贈呈は白血病患者や病院スタッフに本田美奈子.さんの遺志を伝え、激励する意味があったのだと思います。

 贈呈式には、当時、日本造血細胞移植学会を主催した坂巻壽副院長と私が出席しました。たくさんのバンダナをいただき、患者さんに分けて差し上げることになりました。

 LFLが作製したバンダナには、本田美奈子.さんが生前に好きだったという四つ葉のクローバーと、「アメイジング・グレイス」の楽譜がプリントされていました。

 娘の遺志を伝えたい母親の温かい、そして切ない気持ちがズシリと伝わってきました。親として亡き娘のために、そして白血病の患者のために、大切な仕事として頑張っている、ありがたい母の思いであったと思いました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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