新型コロナ第6波をどう過ごすか

コロナ感染で精巣痛…精子にどんな影響を与えるのか?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 全国で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症。男性の感染者の中には精巣の痛みを訴えるケースもある。新型コロナウイルスと造精機能障害などについて東邦大学医学部泌尿器科学講座の小林秀行准教授に解説してもらった。

 新型コロナウイルス感染症の原因となる新型コロナウイルスはウイルス表面の突起(Sタンパク)がヒトの細胞膜のACE2受容体に結合することで感染が開始する。さらにこの受容体の近くにあるTMPRSS2と呼ばれる酵素がSタンパクを切断することで感染が成立する。

 つまり新型コロナウイルスは、ACE2受容体という足場とTMPRSS2というハサミがないとヒトの中には侵入できない。

「実は、ACE2受容体とTMPRSS2は精巣に多いことが研究で分かっています。このため新型コロナウイルスに感染した男性に、精巣上体炎や精巣炎に関連する精巣痛が見られるとの報告があります。その中には、風邪症状はなくて精巣の痛みだけで新型コロナウイルス感染症を疑わないケースもあります」

 これまでの研究で、新型コロナウイルスの遺伝子とタンパク質が新型コロナウイルス感染症から回復した患者の精液から見つかっているという。

「これは、血液精巣関門(BTB)と呼ばれる免疫系から精子を守っているバリアー機構がありますが、このBTBが破壊されていることを意味します。つまり、精子を作る機能が障害され、精子に対する抗体ができたり、精巣内のテストステロン産生にも影響が及んでいる可能性があります」

 非閉塞性無精子症と呼ばれる精巣自体に問題のある無精子症では、精巣でのACE2受容体は明らかに数が少ないことが報告されているという。

「年齢によって精巣のACE2受容体の数は異なるようです。20代より30代の方が多いようです」

 それでは、精子の数は回復するのだろうか?

「報告によると、新型コロナウイルス感染症の回復の後で、72~90日間は精子濃度と運動率が減少していたようです。また別の研究でも、新型コロナウイルス感染症から回復した74人の男性で、総精子数、精子濃度、運動率は明らかに低下していました」

 新型コロナウイルス感染症の男性患者は勃起障害(ED)になりやすいと報告されている。ウイルスにより血管壁を拡張させる一酸化窒素合成酵素(NOS)が減り、陰茎動脈拡張能が低下することが一因とされる。しかも男性の感染者の中には精巣や陰茎が縮小するケースがある。医学誌「ランセット」に男性患者の後遺症として精巣と陰茎のサイズの縮小が報告されている。また、国際学術誌「感染病学会誌」が掲載した香港大学の研究チームの報告では、新型コロナに感染したハムスターの精巣を調べたところ、精子数と男性ホルモン「テストステロン」の減少だけでなく精巣の大きさや重さが縮小・軽量化するなどの変化があったという。

 元気な男性の中には新型コロナ感染症を軽く見る人もいるが、感染すれば意外なダメージが出ることを知っておくべきだ。

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