感染症別 正しいクスリの使い方

【A群溶血性レンサ球菌咽頭炎】リウマチ熱の予防のため抗菌薬が使われる

写真はイメージ
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 前回、「風邪に抗菌薬は効かない」というお話を取り上げました。ただし、上気道の感染症の中でもA群溶血性レンサ球菌による急性咽頭炎には抗菌薬が必要ともお話ししました。

 急性咽頭炎は自然軽快することが多いのですが、抗菌薬治療が必要な理由として、①症状のある期間を短縮する②リウマチ熱の予防③扁桃周囲膿瘍などの合併症の予防④周囲に対する感染性を低下させる──などが挙げられます。

 リウマチ熱はA群溶血性レンサ球菌感染から2~3週間後に続発する全身炎症性疾患です。急性期に関節炎や心筋炎などが見られ、その後、心臓弁膜症の原因になることもあります。抗菌薬治療によって発症の予防が可能とされていて、先進国ではリウマチ熱が激減しています。この予防目的のため、症状が改善傾向であってもA群溶血性レンサ球菌による急性咽頭炎に対しては、抗菌薬治療を行うことが妥当とされているのです。

 A群溶血性レンサ球菌による咽頭炎である可能性を高める因子として、38度以上の発熱、咳がない、圧痛を伴う前頚部リンパ節腫脹、白苔を伴う扁桃炎、年齢が3~14歳──などが知られています。可能性が高い場合には迅速抗原検査などを実施して確定診断します。

 治療に使う抗菌薬としては、ペニシリン系抗生物質のアモキシシリンが推奨されています。

 ただ、急性咽頭炎と症状や所見がよく似ている伝染性単核球症に使用してしまった場合、皮疹が生じてしまうことがあります。

 伝染性単核球症は、EBウイルスやサイトメガロウイルスの感染によって起こりますが、EBウイルスが原因の場合、アモキシシリンを投与すると高い確率で皮疹を生じてしまうことが知られています。医療機関での正しい診断が重要です。

荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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