医者も知らない医学の新常識

「遺伝子変異」では病気は決まらない 病気になる確率は6.9%

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 病気というのは、糖尿病にしてもぜんそくにしてもがんにしてもそうですが、「生まれつきの体質」と「生まれてからの環境」の2つの原因によって起こります。

 生まれつきの体質というのは遺伝子の情報によって決まります。人間の遺伝子のすべてが解明されると、遺伝子変異という、病気の原因となる個別の遺伝子の差が多く発見され、それが病気の原因であると考えられるようになりました。

 しかし、実際に遺伝子の変異は、どの程度病気の原因と結びついているのでしょうか? 今年の米国医師会雑誌に、それについての興味深い研究結果が報告されています。多くの人の遺伝情報と医療情報を集めているバイオバンクのデータを解析したところ、病気の原因と考えられている遺伝子変異を持っていても、それで病気になる確率は平均で約6.9%に過ぎない、ということが分かったのです。

 病的とされている遺伝子変異の89%は、変異のない人と病気のリスクに無視できる程度の差しかないものでした。遺伝性乳がんの原因として知られているBRCA遺伝子の変異があっても、乳がんになる確率は38%程度でした。

 遺伝子の変異ですべての病気の原因が解明される、と思われていた時代もありましたが、今はむしろ食事や運動など生活改善の効果が見直されることになりそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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