腰痛のクスリと正しくつきあう

痛みを抑える外用薬は手軽だからといって安易な過剰使用は厳禁

写真はイメージ
写真はイメージ

 腰痛だけでなく、膝の痛みや肩こりなどで外用薬を使っているという方は多いのではないでしょうか。

 そうした痛みに対する外用薬は大きく3つに分類されます。①「テープ剤やパップ剤などの貼付薬(いわゆる湿布)」②「軟膏(なんこう)・クリーム・ローションなどの塗布薬」③「坐剤」です。

 このうち貼付薬と塗布薬は、市販薬として多くの種類がドラッグストアに並んでいるため、気軽に使っている方もたくさんいらっしゃいます。しかし、適正な量を適切に使用しないと、思わぬ副作用が起こる可能性があります。

 上記3つの外用薬は、いずれも消炎鎮痛薬というれっきとした「薬」です。含まれている代表的な有効成分は「フェルビナク」「ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)」「インドメタシン」で、いずれも非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類されます。

 これまでもお話ししましたが、NSAIDsは胃粘膜の保護作用を低下させるため、胃腸障害を起こしやすくなる副作用があります。吐き気、消化不良、下痢、消化器の潰瘍や出血といった副作用や腎機能障害が表れるケースも報告されています。

 貼付薬や塗布薬は、飲み薬に比べると重大な副作用は起こりにくいとされていますが、貼ったり塗ったりすることで、皮膚から吸収された有効成分の一部は血液中に取り込まれて全身に回りますから、飲み薬を飲んだ時と同じような状態になります。過剰な量を継続して使い続けていると、それだけ副作用を起こすリスクも高くなります。

 有効成分が直腸の粘膜から吸収される坐剤は、より飲み薬に近いといえるので、それだけ副作用に注意が必要です。

 また、貼付薬は患部に貼って使用するため、皮膚のかぶれやかゆみが出るケースも多く見られます。塗布薬は手軽に使えるうえに使用感も良いため比較的人気がありますが、軟膏の油分で皮膚がベトついたりローションに含まれるアルコール成分などにより皮膚の刺激感が出たりするケースがあるようです。

 貼付薬や塗布薬は、飲み薬よりも安全性が高いというイメージがあるためか、過剰に使用している人も少なくありません。貼付薬の場合、医療機関で処方できる1処方当たりの貼付薬の枚数は制限されていますが(2022年度診療報酬改定で上限63枚)、市販のものも入手しやすいため、併用して大量に貼っている人もいます。

 繰り返しになりますが、貼付薬でも塗布薬でも坐剤でも、過剰な使用は重大な副作用のリスクを高めます。くれぐれも適切な使用量と使用法を守りましょう。

池田和彦

池田和彦

1973年、広島県広島市生まれ。第一薬科大学薬学部薬剤学科卒。広島佐伯薬剤師会会長。広島市立学校薬剤師、広島市地域ケアマネジメント会議委員などを兼務。新型コロナワクチンの集団接種業務をはじめ、公衆衛生に関する職務にも携わる。

関連記事