私は、「はい」と答えて診察室を出ました。転移の影ではないと言われましたが、不安がよぎります。「転移でなかったら何が考えられるでしょうか?」と、どうして聞かなかったのかと後悔しました。
診察の時、B看護師がジッと私を見つめていたように感じました。
結果が良ければ、病院の近くのお店でコーヒーを飲み、モンブランケーキを食べて帰るつもりでしたが、素通りしました。また、自宅近くのスーパーで総菜を買って帰るつもりでしたが、そちらにも寄りませんでした。
2カ月後、再びCT検査を受けたところ、担当医から「影が消えています。機械の人工的なトラブルだったように思います」と言われました。これでホッとできました。この2カ月間の不安はなんだったのだろうかと思いました。
診察室を出たところでB看護師が近づいてきて、拍手をしながら「よかったですね。これで安心しましたね」と言ってくれました。フェースシールドとマスク越しでしたが、目がニコニコしているのが分かりました。
私はとてもうれしくなって、「ありがとう」と何度も繰り返しました。B看護師は本当に心配してくれていたんだと感じました。
◇ ◇ ◇
がんの患者さんは、たくさん不安な思いを抱えています。それだけ繊細なのです。
がんと向き合い生きていく