最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

「5W1H」を徹底した報告が患者と家族のQOLを向上させる

写真はイメージ
写真はイメージ

 私たち「在宅医療」は将来どこに行き着くのでしょうか? そして何を目指せば良いのか? 

 患者さんやそのご家族のあらゆる困り事に応えていくという、私たちにしかできない在宅医療の基本スタンスを確立させながら、将来的には地域のさまざまな方々にも参加していただき、いざ病気となった時には、男でも女でも老いも若きも一人でも、自宅でなに不自由なく療養できる。そんな安心安全な地域コミュニティーになる。それをみなさんと一緒になって試行錯誤しながら実現できればと考えています。

 そのためにもまずは院内におけるスタッフ間の連携が重要になってきます。中でも意思の疎通がひときわ大切です。当院がスタートした時とは違い、ZoomなどのITツールも現在は普及しています。それを大いに活用すべく、全スタッフにiPhoneとiPadを支給し、患者さんに関する情報や、その他の業務に関する情報を、敏速に共有しています。今後も必要に応じて、新しいシステムを導入していくつもりです。

 ただし、ITツールはあくまでも道具。最大の効果を生むためには、患者さんの困り事をしっかりと察知し、問題解決を目指す診療パートナー(看護師や理学療法士など有資格者)が不可欠です。ちなみにそれは誰のためのパートナーかといえば、患者さんやご家族であり、また地域の訪問看護ステーションやケアマネジャーさんです。

 最近、院内で改めて取り組んでいるのは、正しい言葉で人に伝えるということです。日本人なら日本語が話せて当たり前と考えるかもしれません。

 しかし実はきちんと日本語を話すことができる人と、できない人との間では開きがあるものなのです。経営者や管理職の方などは経験があるかと思いますが、日頃からスタッフに対して、「相手に伝わる日本語」を話すことを求めています。

 たとえばあやふやな報告をしてきたら、それを修正し、誰が誰になにをして、いつどうなるかを整理してもらう。主語を省かず、述語もしっかりと伝える。だから「てにをは」をきちんと使うことを意識しています。

 これを徹底するだけでもスタッフ同士の間はもちろん、患者さんやご家族との間の情報共有もスムーズになり、また誤解が生じなくなりました。結果、患者さんやご家族のQOLが確実に向上するのです。

 近い将来、在宅医療はもっと拡大するでしょう。すると、高齢者の終末医療にかかわらず、あらゆる領域の医療が在宅で、容易に行えるようになる。そしてそんな地域を実現していきたい。そのためのパートナーになりたいと考えています。

 地域とつながる。患者さんやご家族ともつながる。スタッフ同士もつながる。コロナで社会の連携が寸断され脅かされたことで、いっそうその大切さを噛み締めています。良質な在宅医療の確立のためにも、今後「つながり」がますます必要になっていくものと思い知らされたのでした。

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

関連記事